第75話 玉座が奪われる!?

「な、どうして?」


「モンスターでは、わたしを倒せない。それだけの開きがある」

 チサちゃんが、杖をスピンコックした。


「せっかくだから、全力を出す」

 例の如く、チサちゃんが火球を放出する。

 だが、その形は太陽を思わせる大きさで、熱量も計り知れない。



「ムダよムダ! アンタたちが倒したカブト兵より硬い装甲を持つわたくしが、炎如きにヒィッ!」



 それ以上、エンプーサは話すことができなかった。



『即墜ち二コマ』とはこのことか。



 チサちゃんの放った疑似太陽により、エンプーサは断末魔すら焼き尽くされる。


 エンプーサもしぶとい。黒焦げになりながらも、実体を保っている。姿は、人間サイズに縮んでいるが。



「ど、どうして? わたくしが負けるなんて! そ、そうか!」

 憎悪に満ちたエ・ロの視線が、ボクに向けられた。




「その玉座に、何か仕掛けがあるのね?」

 どこに動く体力があったのか。エンプーサが瞬間的に、ボクの正面に立っていた。

「この玉座は、回復タイプみたいね? 素晴らしいわぁ。マナが溢れ出ている」

 ボクに背を向けて、エンプーサはボクに座ろうとする。


 ヨロイに取り付けられた玉座は、チサちゃん専用だ。しかし、大きく作られているため、大人でも座れてしまう。


「く、この!」


 逃げようとするが、節足がボクの身体をガッチリフックして離れない。


「チサちゃん、どうしよう?」

「平気。ダイキは、じっとしていて」


 チサちゃんは言うが、自分以外の魔王を座らせても大丈夫なのか?






「どれどれ、座り心地の方は……ヒギィ!」

 ボクに腰を下ろした途端、エンプーサが艶っぽい声を上げた。





「何コレ何コレ! 信じられない! 膨大なマナが、流れ込んでくる! 頭の中にまでぇ!」

 ボクから腰を上げようとするが、腰が抜けてしまったらしい。立てないでいる。


「なに、どうなってるの、チサちゃん?」

「ダイキのマナに、下から突き上げられている。精神に直接ダメージを受けて、立てない状態」

「ボク、何もしてないよ?」




「エンプーサがマナを取り込もうとして、逆に汚染されている。つまり、自爆」




 ボクって、そんなに凄い力を持っているってコト?



「はひいん! んほお!」

 さっきから、エンプーサはだらしない声を上げている。



「それなら離れたらよくないです?」

「うううごけにゃい! 気持ちよすぎて、身体が離れてくれないんいいいい!」


 変な声を出し続けながら、エンプーサは立ったり座ったりの上下運動を繰り返す。


「ダイキの持つマナの量は、人間の想像を遥かに超えている。L.O程度の容量では取り込みきれない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る