第72話 ボス? と対決
更に奥へと進むと、どす黒いモヤが眼前に広がっていた。
「これが、ボスモンスター」
森を浸食していた怪物は、二本足で立つカブトムシだ!
頭だけカブトの角を生やし、姿は人間の形に近い。 カブトムシに似た鎧を纏った魔物とも言える。
魔物は、角を模した二股の槍を構えた。
「来るのである」
ゼーゼマンが、エィハスに攻撃力アップの魔法を施す。
エィハスとオンコが飛び出した。
ゼーゼマンが後方から二人の援護に回る。
「てや!」
ドワーフに鍛え直された剣を振るって、エィハスが斬りかかった。
しかし、カブトの硬い装甲は、ドワーフ製の剣さえ阻む。
「まだまだ」
エィハスとカブトが、鍔迫り合いになった。
エィハスだって歴戦の戦士だ。力比べで後れは取らない。エィハスは、カブトを弾き飛ばす。
「ウインドカッターである!」
防御がガラ空きになった胴体に、ゼーゼマンの魔法が炸裂した。
「やった!」
ボクは勝利を確信する。
「浅いのである」
ゼーゼマンは、杖を構え直していた。
熟練エルフの魔法でさえ、カブトのヨロイは跳ね返す。
敵の懐に飛び込み、オンコはカブトのヨロイを、ノックでもするかのようにコンコンと指で叩く。角状の槍が飛んでくると、素早く逃げ出した。
この三人が組んで本格的に戦う光景って、初めて見たかもしれない。
「音の具合からして、魔法金属の類いだよ!」
ドワーフは、音を頼りに物質の硬度を測れるらしい。
「ならば、大技で倒さねば無理である。時間を稼いで欲しいである」
後方へ下がり、ゼーゼマンが呪文を唱え始める。
角状の槍をかわし、エィハスは関節のつなぎ目に剣を滑り込ませた。
切った部分に、オンコが爆薬を仕掛ける。
爆発音が、森に響き渡った。
「トドメである」
詠唱を終えたゼーゼマンが、カブトの頭上に雷を落とす。
角に直撃を受けたカブトは、ビクンと身体を震わせた後、グシャっとなり潰れた。
連係プレーで、カブトムシを撃退するなんて。
ボクの出番はなかったな。
「ケガはない?」
せめて治療を。
「平気である。それより気をつけるである」
何に? と言いかけたそのとき、上空から真っ黒い影が飛来してきた。カブトの死骸がある方へ真上に落下し、押しつぶす。
「クワガタまで!」
オスのクワガタ鎧を着た、二本足のモンスターが。
頭の角をガシャンガシャンと鳴らしながら、こちらを威嚇してきた。
カブトがゴリマッチョなら、このクワガタは細マッチョタイプだ。
「コイツも多分、同じくらい強いよ!」
手持ちのアイテムを、オンコが確認する。
三人は疲弊しているはず。ボクが戦うしかない。
「チサちゃん、イスを外すよ」
「大丈夫。このままでいい」
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