第四章 「おさんぽ」という名の迷宮探索

第40話 早朝依頼人

 ゴゴゴ……という音で、ボクは目が覚めた。


 チサちゃんも同じだったようで、ボクの身体から飛び起きる。朝の支度すらせず、窓の外に目をやった。「おおう」と、驚きの声を上げる。


「ダイキも一緒に見る。魔王同士が戦ったら、こうなるって分かってほしい」

「うん。言うとおりにするよ」


 ボクはチサちゃんに腕を引かれ、窓辺に立つ。


「うわああ!」


 城から見て北の方角、畑の向こうに、本物の岩山ができていた。

 これが鉱山か。

 昨日まで、岩山なんてなかったのに。



「あれが、鉱山?」

「そう。ドワーフが住んでいる」


 ドワーフか。見たことなかったな。


 遠い世界に住む種族に、ボクは思いを馳せる。


 ちょうど、セイさんが客人を連れてきた。


「あのー」

 冒険者ギルドの受付嬢さんである。

「おはようございます。魔王さま。冒険者ギルドの受付嬢をしております。ネネコと申します」

 ネコミミ受付嬢のネネコさんが、緊張気味に挨拶をした。


「これはご丁寧に。ご用件は?」

 セイさんが、ネネコさんに応対する。


「はい。実は魔王さま、先ほどルセランドの国王から『鉱山らしき山が出現したので、事情を聞いてこい』と言われました。できれば、ご確認をお願いしたいのですが」

 ネネコさんが、何度も頭を下げた。


「さっき見た」


「そうですか! もしよろしければ、この件についてお話をさせていただきたく」


「構わない。セイ、ネネコにお茶をお出しして」


 セイさんは「承知」と席を離れる。

「国王が、あの山へ調査隊を派遣しまして。【ゴマトマ鉱山】という名前だと判明しました」


「それだけではないはずです。他に何か報せがあるのでは?」


「そこまで把握しておられますか」

 ネネコさんは、お茶を一気に飲み干して、言葉を続けた。

「国王から、魔王さまにご依頼があるそうです」


「分かりました。お話だけでもうかがいます」

 セイさんが、ネネコさんから一枚の書類を受け取る。


「なんて書いているの?」

「言っている側から。魔王・チサ様、ダンジョンの調査依頼が」


 チサちゃんも、書類に目を通す。


 鉱山にダンジョンができたので、調査して欲しいと書かれていた。

 街の兵隊は、入り口だけ発見したが、探索は魔王にやってもらいたいという。




「無責任というわけじゃないのですよ」と、ネネコさんは言う。

「国王さまは、魔王さまの遊び場を、大人が踏み荒らすのも、というお考えでして」


 チサちゃんの好奇心を刺激しよう、というつもりらしい。


 また、

「国が関わると冒険者の取り分がなくなる」

 というクレームも発生するのだとか。

 民間で解決できそうなら民間に任せろ、という主張だ。

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