第2話 幼女魔王 チサ・ス・ギル

「お初にお目に掛かります。ワタクシ、ここ異世界地球支部参謀、セイ・ショガクと申すモノです」


 秘書風の姿であるセイさんが、自身を参謀と名乗った。

 髪はウルフカットで、毛先は後ろに跳ねている。

 スーツの下から、胸がはち切れそうだ。

 

 チサちゃんは丸っこくてカワイイタイプだが、セイさんはプロポーション抜群の美人さんなタイプと言えた。


 ボクも自己紹介をする。


「異世界? ココが?」


「今風な言い方をすれば。厳密には、地球の裏側と言いましょうか。世界は表と裏があるのです。我々は、裏側の世界に定住しようと考えております」


 とんでもないところにきてしまったぞ!

 アトラクションにしては、なんかやたら手が込んでるなーと思ったんだ。


 チサちゃんは、外見も黒いレオタード姿になっていた。鼠径部を包む部分は、競泳水着のように食い込んでいる。フリルで隠してはいるけど。寒そうにしてないから、大丈夫だとは思う。


 露出度が高いせいで、チサちゃんの体温が直に伝わってくる。心なしか、ファミレスの時よりポカポカしていた。


「あなたを玉座にして座っているお方こそ、魔王チサ・ス・ギル。この異世界地球支部を統べるお方です」


 セイさんより、チサちゃんの方がエラいのか。


 言われてみれば、チサちゃんが腕に付けている腕輪も、ブーツも、セイさんのものより豪華だ。



「へえ、この小さい子どもがねえ」


 とても、世界を征服しようとする魔王には見えないけれど。


 話題の中心となっている当のご本人は、炭酸のぶどうジュースでノドを潤している。


「ご心配なく、姿こそ小さいですが、実年齢一〇〇を超えております。事案などではございません。正確には一〇九歳です」


 ボクの考えを見透かされちゃったよ。


「ちなみにワタクシは一二三歳です」


 魔族は誕生時、一〇〇年の間ずっと繭の中で暮らすらしい。

 繭の中に入れられた赤子は、自分に相応しい形をなすまで、繭の内部過ごす。


「あれですよ。今風に言えばキャラメイクというのですか?」


 確かに、そうとも言える。

 好きにカスタマイズしていくと、途方もなく時間を食う。


 魔族はそれを、何年も掛けて行うのだとか。


 ある程度子どもの形になってから、ようやく外へ旅立つという。


「あの、ボクの名前も知っていたみたいですが?」


「あなたのことは、総力を挙げて調査致しました。長内おさない 大毅だいきさま。三八歳。二二歳の頃から勤め上げた勤務先をクビになる。ずっと女性経験なし」


 その情報、余計じゃない?


「それで、魔王の玉座って?」


「我々の魔王さまは、あらゆる世界に子を放ちます。その子どもたちが成長するために、現地人を玉座にして、座するのです。現実世界とコネクトし、マナ、つまり魔王サマの魔力を定着させるためにも必要な行事です」


 そんな制度があるの? めんどくさそう。


 話のネタにされている魔王サマは、ずっとバイキングの残りを食べている。

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