勇者ハイティーン
島風あさみ
第1話・夢のような夢を見ましたデュフフ
そこはきっと最終ステージ。
玉座にいるのは、おそらく
周囲は溶岩が煮えたぎり、あちこちから
噴煙があるならステージは煙だらけで真っ暗なはずですが、換気扇でもあるのか、天井の穴に煙が吸い込まれていました便利です。
マグマステージにはポツポツと島が浮かんでいて、その一つに魔王(推定)さんが。
「待っていた……待ちかねたぞ勇者☆☆☆☆!」
あっ! いま魔王さんがツノの生えた
予想通りです! 魔王さんはイケメンさんでした!
勇者さんは視界に入っていませんが、これはきっと
「……じゅるり」
よだれが
「あれ? イケメン魔王さんは……?」
最終ステージはどこへ行ったのか、ぼやけた視界には見慣れた天井しか
「しまった……また勇者さんのご
最近よく見る夢でした。
魔王さんのイケメンフェイスまでは見れるのですが、いざ決戦というところで、いつも目が覚めてしまうのです。
仕方ないのでベッドから
「おヒゲのレッドなイケメン様、今日もイケメンのお恵みあれ」
しかしおヒゲのおじさまは背中を向けるだけで、大胸筋
「ああっもう
別のポスターを買わなきゃダメですね。
「……という夢を見たんですよ」
とりあえず、お
「なんだ夢オチか」「夢ですけどオチはありません!」
お兄の名前は
わたしこと
成績もいいので、同じ高校に入るのにホント苦労しましたよ。
「おまえは眼鏡をかけて寝るから駄目だ」
眼鏡は関係ないと思います。
「やだなぁお兄、いくらわたしでも眼鏡で寝たりしませんよ。いまだってかけてませんし」
「
「あらまぁ」
メガネメガネ。
「ところでお兄、今日もレストアですか?」
朝食のトーストをパクつきながら質問します。
「どうも基盤に問題があるようだ。チェックに時間がかかる」
お兄は毎日、夜明け前から機械いじりに夢中なのです。
「早く行かないと遅刻しますよ?」
「もう少しでキリがつく。朝の会議には間に合わせる」
お兄は生徒会で書記をやっています。
帰宅部とはいえ、お勉強とお仕事の上に機械いじりまでするのは大変でしょうに。
「
「朝練で遅れるらしい」
スマホを
ご近所で
わたしは真緒姉が大好きなので『さっさと(お兄と)爆発もといケッコンしろ』と思っていますが、世の中なかなか
「じゃあモグモグお先に登校しますねガバー」
「食いながら
トーストを
「はぐもぐごっくん」
なのでコーヒー入り牛乳で無理矢理流し込みました。
我が家はお父さんこそ普通のサラリーマンですが、マイホームの一階は、いまは亡きお
ただし、とっくの昔に閉店しています。
お兄はこのオンボロゲーセンの設備と機材を修理して、レトロゲーセンとして復活させようと、あれこれ
店内はお掃除されて(わたしもお手伝いしました)綺麗になっていますが、肝心のゲーム
高校に入ってから電子機器の知識を独学でお勉強したお兄は、テスター片手に配線や基盤のチェックを行う日々を送っています。
なので妹のわたしをちっとも構ってくれません。
「今日も一人で登校ですか……」
開きっぱなしの店頭から顔を出すと、ご近所さんはみんな引っ越して綺麗さっぱり整地され、区画整理を待つばかり。
昔はそれなりに
しかし一時は
つまり将来的には、お兄のレトロゲーセンが成功する可能性が残されているのです。
「ま~ゆ~ちゃん!」
「わひゃっ!」
いきなり抱きつかれました。
「真緒姉⁉」
お顔を見なくてもわかります。
真緒姉は、わたしを見ると必ず抱きついてくるのです。
「……また男物のシャンプー使いましたね?」
朝練を終えてシャワーを浴びたのか、ミント系の香りがプンプンします。
「もうちょっと女子高生らしいスメルを装備すべきだと思います」
わたしもあまり他人の事は言えませんが、真緒姉のオシャレ感覚は男子並みです。
「切れてたんだ。どうせボディーシャンプーも男子と一緒の使ってるし」
真緒姉は女の子なのに、お兄に匹敵する高身長でショートカットのヅカ系イケメンJKさんなので、学校では男子より女子に人気があります。
なのでミントスメルがしても、ちっとも違和感がないのですが……。
「セーラー服でも女子に見えないのは問題アリです」
グレーの夏服スカートが男子用ズボンへと自動的に脳内変換される、変な特異空間を発生させる女子高生、それが真緒姉なのです。
お胸がペッタンコなイケメン女子でも美人は美人に違いなく、わたしにも優しくしてくれるので、ぜひお兄のお嫁さんになって、わたしのお
「健司は?」
昔は【健ちゃん】と呼んでいたのですが、中学に入ったあたりから呼び捨てに。
これは脈があるのか、それとも喧嘩友達から発展の余地がないだけなのか。
あれこれ刺激して、お兄とくっつけてしまいたいのですが……。
「いつものように基盤を
まだ知識しかないので、故障個所がわかっても手を出せないのです。
ハンダゴテ片手に修理しまくるのは、まだまだ先になりそうですね。
「了解した。ここは私に任せて先に行け」
死亡フラグみたいな
ラブコメみたいで絶対に脈アリだと思うのですが、しかしお二人ともおタヌキさんなので、なかなか
「ではお先に~」
そろそろケリをつけないと、受験でデートするお
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