第90話 対魅了勇者戦!

 寝てても声が聞こえるから完全には寝れない、みーちゃんもぴーちゃんもぐっすりよ。


 ポンコツは後でアドリアナと説教な。


(ま、まぁキュア祭りは何となく分かったけど、それしなかったら雑魚しか此処に入って来ない可能性あるから、最初にやり過ぎて段々しょぼいとか愚痴ってたし。)


 結構大事な報告忘れるよな、撤回の準備とっくにしてたらどうすんだよ!ドラゴンのが良いって登ってたかもしれないだろ!


(ああっ!ごめ!)


 神様って奴はどいつもこいつも使えねぇ!



 


 冒険者が動いた!皆起きて!静かにね!ポンコツには結界で封じ込めて衝撃波!を送る。


 結界の中でジタバタ暴れてるが無視ー。


 みーちゃんとぴーちゃんはちゃんと無言で起きて近づいてくる、いいかい、あいつらの後を追うからね。


 姉妹でコクコク、大変宜しい。


 ポンコツはそのまま閉じ込めて追いかけるぞ?いいな!?


 あいあいさー!って言ってる絶対。


(すまぬーすまぬー!)




「五階ってサイプロクスだよね、あたしの装備じゃ無理だわ、ごめん。」


「いいって、二人でも何とかなるし?無理なら手ださねーよ。」


「そうだな、その方がいい、今はモンスターより強盗の問題だからな。」


「でもずっとダンジョンに居るのかな?もう逃げてる可能性ない?」


「んまそれも選択肢として取っておくわ。」


「おい、行くぞ油断するなよ」


「へいーにしてもダンジョンの階段、もはや階段じゃないよな、坂じゃん?何でこんな変化したんだよ、滑るわー」


 みーちゃん仕様をディスるなし!


「何か中級でも変化があったって言ってた。」


「ダンジョンの異変は分かんねーもんな。」


 登りにくそうにチマチマ登る、みーちゃんは背中にぴーちゃんは頭に、今は階段頑張っての展開ではないのだ。


 冒険者が五階に着いた、何かないか警戒している。


 そっと後ろを着いていく、迷彩欲しいなーもう!


(か、考えとく……)


 言質とったなりぃ!!


「今のところサイプロクスしか居ないな、奥に行ってみるか。」


「おう、了解ー。」


「倒せたらお金入るのにーもうやだわ。」


「五階が異常ないなら倒すさ。」


 まともな冒険者久しぶりに見てる、あれが普通だよね……



「そうだわ、五階って休憩エリアあるじゃん?もし強盗ならそこ狙い目だよな?」


「ああ、可能性は高い、そこで待ち伏せでもしてみるか?」


「囮ね、リスキーだけど……取り返したいし、しょうがない、釣るか」



 中々いい展開、進んで囮になってくれる、隙が大事だからな。


 ポンコツはサイプロクスの影に隠れて着いてこいよ?ヘマすんな。


 また、あいあいさーって言ってると思う、いい加減覚えないかな?


 片足に人間が隠れる事が出来る位デカイのだ、猫背になってますよ?肩凝らない?


 俺達もサイプロクスの影に隠れているが小さいし、動物だから見つかってもそんな警戒されないと思う、されたら俺達の魅了時間だぜ。


「つかデカイから邪魔だなサイプロクスー」


「それが作戦なのかもな。」


 成る程ー勉強になりますぅ。



 暫く警戒しながら歩いて休憩エリアというものが近くなってきた、突然見えてくる四角い横穴がそうらしい、あれで襲われたら袋小路じゃん?あれで休憩出来るの?


(そうなんじゃないかな?ダンジョンが勝手に作り出した空間を人間が勝手に休憩エリアだとおもってるんじゃない?)


 ほうほう、階段が弄れるなら何か鍵つき扉でも着けてやれば?


(中で犯罪が起きてたら?)


 むっ!成る程ー結界が誰でも使えれば安心なんだな。


 冒険者が休憩エリアに入って休む姿勢を取る、二人が背を向けてその影で一人が監視するらしい。


 ノンアクティブだから攻撃はしてこないけど、ウロウロ歩き回るから隠れるのも大変!ポンコツが見つからないのを祈るばかりだ。


 これ何時間やるの?ヤバー神経すり減るわ


(勇者はあたしにはまだ見えてる、来てるのも感じてるみたいよ、機会を伺ってるね。)


 そうだわ、あいつ気配消せるんだもんな、お前がポンコツに注意しとけよ?こっちは合体しとけば耳輪の効果で範囲カバー出来るみたいだから、範囲とは儲けもんよ。


(あたしでも見失う可能性あるから絶対とは言えないけど頑張る!)


 だから迷彩欲しいなって言ってるのに!


(もー!分かったよ!終わったら約束する)


 何で今じゃ駄目なの?


(……ちょっと色々な問題有りすぎて力が足りないのよ……)


 崩壊が仇になったぜ……



 ドスドス動くサイプロクスさんの影でチョロチョロ隠れること三十分、ポンコツが疲れてるよ、少し見え隠れしてるよ!!


 休憩を醸し出している冒険者もリラックスモードを見せかけ始めた。



(動いた!ちょと集中するから、ミネルバ頑張れよ!)


 ポンコツの、そんなーって声が聞こえてきそうだわー。


(魅了だけが動いてる、二人は待機みたい。)


 まさかのナンパ式じゃないよね、引っ掛かる方もアレだけど、顔がいいからイケメン。


(ミネルバ危ないかも、入り口から入ってくるテイで近づくみたい!)


 さっ!サイプロクスさんー!入り口に目を向けようよ、少しは自我持とうよ!やれば出来る子だって信じてるからっ!


 俺の探知が入り口の勇者を察知してるが、マジポンコツ見つかる位置だわ、あわあわしてるポンコツー!


 角から勇者が顔を出した数秒前にサイプロクスさんが入り口を向いた!やれば出来る子!


 いいよ、そのままそのまま!


 サイプロクスと、勇者がすれ違う、気づかれるな!と思ったら、サイプロクスさん体ごと勇者に着いていく、なにしてんの!見つからなかったけど、勇者が不審顔で後ろをチラッと気にしてる、そこは止まるとこだろ!


 と思ったら止まった、何、これ通じてる?


 後ろを振り向くなよー!フリじゃねぇ!


 止まったサイプロクスに安心した様子で休憩エリアに近づいて行くぞ、あいつが魔道具を使う時が決戦の時よ。


 姉妹が頷いたのを感じる、ポンコツはわかんねー?わたわたしてる気配だけ感じてる。


 アドリアナの返事がない集中してるんだろう


 俺達も気配を察知させない様にサイプロクスの間を縫ってサッっと近づいていく。



 休憩エリアの冒険者が気が付く、あいつは今魔道具を使っていない、堂々と話しかける。


「あー先に居たんだ……ごめんね、驚かせて、仲間が怪我したから休憩をしようかって話ししててね」


「仲間が?側に居ないな、どうしたんだ。」


 警戒している、それでいい。


「今入り口で手当てしてるんだ、空いてるか見に来たんだけどね」


「そうか、それなら俺達は上に向かう、使っていいぞ。」


「そそーいいよ、怪我人連れて来なよ、あたし少しは手当ての手伝い出来るよ?」

 

「本当に!?助かるよ、かなり酷くて……」


「へぇあんたら初めてなの?初めては無茶する奴は多いからなー?」


「ははっ、お恥ずかしいです、初めてなんですよ、力を試したくてってそれがこの結果で」


「お言葉に甘えて連れて来ますね」


「おっけー」


 休憩エリアを離れたついでに魔道具を発動させた様だ、アドリアナ!二人は!?


(待機してる!魅了するまで待機するみたい)



 おっけー!行くぞ!ポンコツの結界も解く


 ダッシュで勇者に向かうと出てきた俺たちに驚く。


「なっ!なんで君達が!?」


 動揺して声をあげたのでエリアに居た冒険者も出てくる。


「え?ど、動物が……何で?」


 勇者がしまったって顔をする、ポンコツこいやー!


「はいい!きゅーちゃん!!」


「げぇっ!?ポンコツ店員!?」


 ふはは!動揺しておるわ!ポンコツ、俺の言葉をそのままこいつに伝えな!


「あいさー!」


「ちょ、何!?なんなの!」


「今から言う言葉はきゅーちゃんの言葉です!魅了勇者さん、聞いてください!」


「魅了……勇者!?」


「チッ!犬風情が邪魔しやがって!」


「まさか……強盗って勇者が!?」



「そのとーり!ここに籠って入ってくる冒険者を魅了して強盗しているんです!」


「ちょっと!勘違いじゃないの?僕は勇者でもないし魅了なんて持ってない!」


「さっき邪魔しやがってって言ってたよね?」


 墓穴ー!


「違うよ!連れの怪我人のじゃま



「俺達に魅了は効かない、特別だから?お前程度の能力が効くと思ったか?クズ勇者、お前が今持っている気配を消せる魔道具も効かない!さあどうする?堕ちた勇者よ」


 おっけーちゃんと伝えてる。


「……はぁ?何いってんのか分からないよ?犬が喋ってる?何処が?」


 テイマーなの伝えて


「私はテイマーなんです!声聞こえてます!」


「は?そ、そうだったの!?」



「後ろの冒険者は下がりな、こいつに隙見せるなよ、魅了掛けられて又道具盗まれたくないだろ?ここは俺達の戦場よ、邪魔すんな」


「マジかよ勇者が強盗……?」


「一応下がるぞ、事情かわからない。」


「あたしの装備盗んだのこいつなの!?」





「……もー何だよ君達、ワケわかんないし?何でここに居るって分かったの?」


「言っただろ?お前より俺達の方が偉いの?分かる?上なんだよ、お前は動物以下なの。」



「へぇーじゃあ魅力が効かないのも勇者の僕らより上だからって?猫はまだ試してないけど?本当かな?じゃあ何で隠してたのかな?」


「さぁね、何ならみーちゃんに魅了掛けてみる?いいよ?やってみなド三流勇者さんよー?掛かったらお前の言うこと全部聞いてやるよ?何でも言う通りに、な?」



「……ムカつく犬だな、ポンコツ店員が言う言葉じゃないのは本当みたいだね?猫ちゃん本当に貰うよ?いいのかな?」


「黙ってやれないの?負け犬は吠えるのが得意だよなー?こんなトコで強盗なんかしちゃって、苦戦してんじゃねーの?おん?」


「ぐっ!何だよ!苦戦なんかするわけないだろ!勇者だぞ!お前らなんかすぐに倒してあげるよ!猫を貰ったらなっ!!」


 頭に血が昇った勇者が目を光らせる。


 いくぞ!今だ!必殺技!


 一人と三匹で空間庫から鏡を取り出す、勇者に向けて、見ろ!必殺鏡見たら自分に魅了掛かっちゃった作戦!!


「ピ」ながい


「ンミッ」ひっさつからみわざ!



「は?」呆然とする勇者、が




「ははっ!自分の魅了に掛かる訳ないだろ!馬鹿犬!」


 やっぱそうですかねー?


「ピー」おにぃ……


「し、失敗ですか……」



 ハッン!鑑定してみな!ポンコツ!


「え?鑑定?…………あれ?魅了になってますよ?何で平気なんですかね?」



「え」勇者が狼狽える


 ポンコツ、こいつに他の二人連れて来いって言いな。


「他の二人の勇者をここに連れてきて下さい」


「はぁ?何命令してんだよ!」


 と言いつつ体は隠れている勇者の方向に向かって居る。


「えっあれ!?なっなんで!?体が勝手に!」


 はははっ成功したなりぃ!


「ちょ!なんだよ!これ!糞っ!」


 と遠ざかっていく勇者。


「ど、どういう言ですか?きゅーちゃん」


「ピィ」ぎもんー


 は、単純よ、暗示魔法を見つけてな、掛けたんだ、全部言うこと聞いてやるって時にな、それからの魅了返しで上手く魅了に掛かった、そして全部の言うことを聞くって訳さ。


「おおー!凄いです!!」


「ピピ」でもみりょうかからなかったら、しっぱいしてた?


 そうとも言う、暗示だけじゃ弱いからな


「ミッミッ」にぃにはやっぱりすごいの!


(はぁー緊張した……)


 ちょっとな、アドリアナに魅了の力を少し強くしてもらっんだ、上書きで自分の支配より少し高くなったから魅了に掛かった、これも賭けだった。


 まぁ、出来なければブッパで消し去るからどっちでも良かったのよ。



 そんな説明をしていると離れていた冒険者が此方に近づいて来る。


「な、なあさっきの話してたのマジ?」


「あいつら本物の勇者だったの!?」


「というか俺達囮だったか?」



「す、すいません、油断出来ない相手だったんでー……でも!キュアで治せます!」


「え!治せる?もしかして街中の奇妙な物忘れって、あんたが治したの?」


「はいーへへっ」


「さっき勇者より上だって言ってたな、あんた達はそういう存在って事なのか?」


((余計な事言うなよ?神の天罰を受けたくなかったらな?))


「!?何今脳内で声が……」


「……やべぇの見たって事か……」


「神の天罰……成る程了解した墓場まで持っていこう。」


 良い子だ、黙ってればいいんだよ。


「きゅーちゃん怖いですぅ……」


 お黙り!念押ししないといけないでしょうが!神様だろが!!


「そ、そーでした、へへ忘れちゃう」


(忘れんなー!)



 そんなこんなで、遠くからズルズルと魅了勇者が仲間を二人連れてきた。


「おいっ!ふざけんな!裏切るのか!?」


「そうだ!独り占めかよっ!」


「ち、違うんだって!あの犬にやられたんだよ!魅了を返された!体が言うこと聞かないんだよ!」


「ふざけやがって!自分の魅了は掛からないのは試しただろう!」


「そうだよっ掛からなかったのに掛かったなんて嘘つきやがって!」



 うっせーな?みーちゃん!


「ンミッ!」いくの!


 二人の勇者に鳩尾キック!!


「「んぐおおおぉ!!」」


「ちょ!ええええっ!?」



「三人ともとは……呆れたな……」


「うは、勇者より動物のがこえー」


「でも可愛い……」





 さて、魅了勇者にはもう一仕事してもらおうか、ポンコツ


「はい!魅了勇者さん、二人の勇者にも魅了を掛けて下さい!」


「はぁ!?僕がそんな事!」目が光ると、勇者二人が魅了に掛かったのを確認。


「い。今僕が……え?」



「あなたはもう全ての言うことを聞かざるを得ない体になっています。」


「なんで……自分には掛からないはずなのに……」


「その二人に命令してください、強盗で盗んだもの全て出すように、そしてあなたもです!」


 くの字だった二人が苦しみながら盗んだものを全て空間庫から放り出す、そして魅了勇者も、出るわ出るわー呆れる程。



「あー!あたしの装備じゃん!!マジだ!」


 返すよー持っていきな。


「あ、きゅーちゃんが返すって言ってます、どうぞー。」


「ほっ本当に?やだー可愛いのにカッコいい」


 変態にはならないでね。


「そ、それ言うんですか?」


 性癖は大丈夫か聞いてみ?


「あのー性癖は大丈夫ですかー?」


「ぶっ!!失礼な犬じゃんか!!」


 さーせん、そんな人に狙われててー。


「きゅーちゃん今狙われててー、同じならどうしようかって?」


「嘘……そんなの居たの、ごごめん、優しい犬だよね!そんなのないから!」



「……これどうするんだ?勇者もだが。」


 後始末は任せな、お前らを囮に使ったのは悪かった、もう自由にしていい。


「だ、そうですー。」


「犬かっけーー!!!」


「分かった、許すし、お前は黙れ!」



 そして囮に使った三人組は今日はもう攻略する気持ちもないからと、帰って行った。


 


 対勇者戦、俺の作戦勝ちなりぃー!ダサいのは横に置いとくなりぃ!

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