第68話 子供の我が儘なヨーン

 町の外に出たはいいが、馬車に乗らないで道の散歩、モンスター出るんだろ?


「みたいですねースライムさんだけじゃないと思いますよ?」


 ほうほう、結界はないもんな!


 暫く歩いていると、冒険者にすれ違う、俺たちを見た瞬間道の端に寄って避けられる、挨拶も出来ないな?


「うー……それくらいはしたぃ」


 こんにちわー「ミ」はー「ピ」は


「……そういうのいいですよ」


 我が儘なペットだぜ。


 お?探知に人間以外発見なのよー!


「ミゥー!」いくのー!


 トテトテ走るとゴブリンだー!ダンジョン以来の再会よっ!


 俺とみーちゃんがシンクロキックしようとしたら、カサッっと繁みから剣が突き出てゴブリンを倒した……


 崩れ落ちるゴブリンとダブルキック不発でスチャッとみーちゃんと二本足……誰やねん……出てこいや!


「チッ一匹逃がすとかマジねーよ。」


 逃がしたの?プギャーされたいの?


「…て!な、何で立ってる犬と猫が?」


 教えてやろう!ゴブリンの仇!


 シンクロキック!!


「プベラッ!」ゴロゴロゴロドーッン!


 やったね!みーちゃん!


「ミィー!」あくをたおすの!


「ピ」なにしてるの


「いやいや、八つ当たりはないと…」


 八つ当たりじゃないよ?さっきのゴブさん友達だったの!やられたら、やりかえす。


「ンミィ」おともだちかわいそうなの


 ほんとよね!いやんなっちゃう!


「ピピ」ねぇねのきょういくによくない


 そんなこといわんとってーやー!!



「おーい!ゴブリン見つけたか!」


 仲間か、やっちまうか……


「きゅーちゃん!目的違うし!」



「誰かいんの?」ガサガサ


 繁みからまた剣士だよ、なまくらってんのぅ?おん?


「うおっ!!っど、動物か……ビックリした、てあれ?ここらで男見なかった?」


「へ?……えーと何か向こうに飛んで行ったかなーって……?」


「……飛んで?いやないし……ってこのゴブリン倒したの?」


「いいえーお仲間の方が……」


「って見てるじゃん!何処行った!?」


「だから、あの、飛んでいきました。」


 やっぱアレだろ?ね?みーちゃん


「ンミ!」なの



 シンクロキック!!


「ぬぐおぉー!」ゴロゴロドッカーン!


 ふう、証拠隠滅完了だぜ。


「ピ」かんぜんはんざい


「違うような……?」



 さて、邪魔者も消えたし散歩再開。


 十メートル程の場所に男が二人倒れてる、なんだろう?事件かなみーちゃん?


「ンミ?」わからないの、たすけるの?


「ピピ」ねぇね……



 死んでないから放って置こう、散歩の邪魔だし、踏みつけて通る、みーちゃんも通る、ポンコツ止まる、何してんの?


「良心が……どうしよう?」


 お前にはおとうたまが居るだろ?悲しむなよ、男親一人で家族の面倒みてんだ、あんまり負担かけるなよ、ほら、コイコイ。


「そうですよね……失礼しますー」


 ポンコツが二人の男を踏んで行く、それでいい、おとうたまも喜んでるぞ?


「ですかね?わー!」


「ピィ」せんのうが、ぱない



 三十分程歩いて出たのはゴブリンさんばっかりだった、うーむ、ここらはゴブさんの縄張り?スライムさんが出ないのが逆に違和感ありなりー。


「このまま進むと小さい村が有りますー」


 ほう、村が、行ってみよう。


 出てくるゴブさんをみーちゃんとやっつけながら、三十分程で村が見えた、確かに村っぽい狭さだ。


 何かいい匂いがする、懐かしい匂いだ、なんだっけ?クンクンしながら歩いて警備の居ない村に入る、クンクン……あの小さい家だ、行ってみよう!


 ……うむ、時代劇に出そうな長屋だ、クンカクンカ……叩いて?


「あ、はいーすいませーん!」コンコン


「……はい、ちょっと待って下さい」


 あら、お若い声ですね、一人なのかなー?両親居ないのかな?メグちゃんー…


 ガラッと扉を開けたのはまだ十歳に満たない女の子、一人なの??


「なんでしょうか?」


「え?あーてえーと…一人なのですか?」


「いいえ、両親は働きに行っていますけど、お知り合いでした?」


 しっかりした子だね、偉い偉い。


「きゅーちゃん……どうしたらいいの?」


 あ、そうだった、何か懐かしい匂いするんだよ、何だか忘れたから見たいなって。


「ああ、成る程、きゅーちゃんが懐かしい匂いがするので見たいって。」


「……不審者ですか?」


 独り言が仇になった!


「ち、違います!私えーと


 テイマーで動物とお喋り出来ます。


「テイマーで!動物とお喋り出来ます!」


 少女が俺たちを見る、まだ不審顔。


「留守の時は人は入れちゃいけないの、だからごめんなさい。」


 ……仕方ないか、少女に無理させてはイカン、可哀想だ。両親が帰るのを待とう。


「じゃあ、両親が帰ったらまた来ますー」


「?そうですか、ならいいんですけど」


 ペシペシ!ほら!行くよ!


「いったい!きゅーちゃん!分かったですー叩かないでー」



「……あの!本当にお喋り出来るんですか!?」


「え?はい出来ますよ?」


「……ならあの、うちの子とお話も出来ますか?ヨーンなんですけど……」


「できますよ?ヨーンですかー?家のお店にも十匹居ます!」


 お前の家じゃねーだろ貧乏居候。


「そ、そうでした……貧乏で居候です。」


「え、あの何かごめんなさい?」


 何だろね、問題のあるヨーンなのかな?


「えーと、ちなみに問題があるヨーンなんですか?いたずらっ子は沢山居ます!」


「え?いや、大人しい子です……」


 余計な話すんな変人!


「うーすいません……」


「本当に大丈夫ですか?……」




 何とか家に入れて貰えた、匂いの前にそのヨーン見せて貰おうか?


「あ、匂いの前にヨーン見せて欲しいって」


「はい、連れてきます。」


 クンクン……落ち着く匂いだー?落ち着く?みーちゃん何か覚えない?


「ンミー?」ちよちゃん?


 それだっ!千代さんの部屋と同じ匂いがする!落ち着く匂いー!


「千代さん!……人間になって初めて匂いがします、これが千代さんの匂い……」


 暫く感傷に浸ってしまった……


「ピ」おいてけぼり


 すまん、後で千代さんの話しよう。


「あのー……いいですか?」


 変人復活、抱えられてるヨーン、何か元気ないぞ?鑑定してみるが異常はない。


「あ、はい、あの異常はないですね?」


「え?」 鑑定した言え。


「え?あ鑑定しました……」


「わ、出来るんですか凄いですね。」


 ふむ。で?何が気になるの?


「で、何が気になるの?ってきゅーちゃんが言ってます。」


「きゅーちゃんってどの子ですか?」


「わんちゃんです」「きゃん!」


「わ、ははお返事したみたいー」


「してますよ?人間の言葉分かりますから」


「っええっ!!す!すごい……」


((なんで?はなせるの?ずるい))


 んだとこら!しおらしくしやがって!


「きゅ、きゅーちゃん落ち着いて!」


「とうかしました?」


((あたちもおはなししたいのに!ずるい))


 …なにこの子、子供なの?分かりにくい


「え、子供なんですか?」


「あ、はいまだ半月なんです。……聞いたんですか?」


「はい、何かあたちもしゃべりたいずるい、って言ってます。」


「えっ!本当に?私……嫌われてないですか?」


((だいすきー))


「だいすきーって言ってますー」


「本当に?何でそっけないの?リム」


((だってあたちをほうっておくんだもん))


「だってあたちをほうっておくんだもん、と言っています」


 何かポンコツが馬鹿ぽい、あ、馬鹿だ。


「!そ、それだったの?ごめんね、でも……お仕事しないといけないし……」


 メッメグちゃんの影なりー!「ミ」り!


 うおい!チビッ子!こっちこいや!


「?どうしたの?震えてる……」


「うーあの、きゅーちゃんがちょっとお怒りモードで……」


「え、何でですかね?」


「昔、貴方のような少女に可愛がって貰ってたんです……お仕事忙しい子で。」


「私みたいに?……そうなんですか。」


 震えて来ないので無理矢理咥えて引き返す、教育的指導入りまーす!


「ええぅ!ちょ暴力は困ります!!」


 しないわ、犬を何だと思って?


「ピ」ただのいぬ


 ……今はこの子の教育!


「暴力なんてしません!きょういうてくしとー?って」


「教育的指導ですか?」


 大分年下に諭されたぜ……


「すいません……でもぉきゅーちゃんにお任せしてもいいですか?」


「乱暴しないなら……」



 はははっ!言質取ったなりー!ヨーンを咥えてお外出ます、あんまり飼い主に近いと甘えるガキよ!


「えっ!」「あ、あの甘えちゃうからあんまり側に居ると駄目らしいです。」


「あ、教育的……み、見てますここで。」


「大丈夫ですよ、きゅーちゃんは意地悪で変な性格で、貶めるのが好きだったり、でも優しいところもあるんで!」


「ほんとに大丈夫ですかね!!?」


 お前の教育的指導後でしてやるよ!


「あわわっ!!」「どどうしたんですか!」



 ((なんなの!こわいよー!たすけて!))


 だーってろ!ガキんちょ!お前どうやってあの子の何処来たんだよ?


((ままがいなくなって、ひろわれた))


 つまりだ、お前は母親に捨てられたんだ、分かるか!


((おむかえくるもん!))


 来ないね!だから拾ってくれたんだよお前の事!あの女の子だろ!


((ううっそうだけど))


 お前はまだガキだからな、人間の事なんてわからねーかもしれない、言ってみりゃお前とあの子の年齢に大した差はないんだよ、あの子もお前と同じ子供なの!


((ちがうもん!おとな!))


 違わねー!子供なんだよ!大きい人間と小さい人間が居るだろ、小さいのはお前と同じ子供なのっ


((う?おおきいにんげんふたついるときがある……))


 その大きいのがあの子の親だ、でもなあんまり家に居ないだろ?


((うん、あさとよるだけ))


 その間何してるか知ってるか?


((ちらない!にんげんじゃない!))


 知ってるわ!だから説教垂れてんだろ、居ない間働いてるの、働くとお金がもらえて生活ができる仕組みなんだよ、人間は。


((それと!あたちをほうっておくのは、かんけいないもんっ))


 大有りだよ!あの子が働いてるって事はこの家が貧しいからだ、わかんなーよな、大人二人とあの子が働いてやっと生活出来てるんだ、そこにお前が拾われた、そこでお前の分まで働かないといけなくなったんだよ、あの子が働いてお前に構えないのは、お前を拾ったから!


((あたちのせいなの?))


 そうだよ、でもそれでも拾って育てようとしてるんだ、なのに何だと!構ってちゃんが!お前が飯食えてるのはあの子が働いてるからなの、そうじゃなきゃお前は捨てられたまま死んでたよ?


((あたちがごはんたべなかったらいいの?))


 それじゃお前が死ぬだろ!拾った意味ないじゃん!


((じゃあどおしたらいいの?))


 構ってなんて言うのはお暇な時だけにしよう、その時は十分甘えろ、仕事したらそっと見守ってやれ、ガキには難しいかもしれないけどな?お前の為だってのは分かったか?


((なんとなくわかった……))


 いいか、ペットってのはな、側に居るだけで癒されるんだよ、お前が元気で側に居てくれたらそりゃあの子も嬉しいだろ、なのに元気も見せないで、心配させて、それでいいってか?今はまだ許せるがな、もう少しすりゃお前も大人だ、何時までもそんな事してんじゃねー。


((げんきでそばにいるだけで?うれしい?))


 そうだよ、現に今お前の心配してるだろ?もしお前が病気になったらな、もっとお金がかかるんだよ、人間の世界はそう回ってるの、お前は働かないでタダ飯食べて、それで構って構って?許せねーな?


 俺の前の人間のおともだちもそうだったよ、金がないのにペット飼って、でも俺達が嬉しいって表現すりゃそら満面の笑みよ!


 なのに、悲しい顔させんな、嬉しい顔させたいだろ?悲しい顔ずっと見てたいの?


((やだ、まえみたいに、わらってくれるとなんだかうれしい))


 そうだよ、今はどうだ?顔見てみろよ?


((……かなしいのさみしいの))


 そうだよ、おまえがそうさせてんだ。


((ぜんぶあたちのせいだったの?))


 そーだな、キツイ言い方すりゃそうだ、だから今日から変われ、嬉しいって顔して、あの子の満面の笑みを見るんだ、そしたら自然と分かる、本能だからな。


((わかったの、やってみる))


 おう、元気に飛び込んでやれ!


 コロコロ転がって少女の座ったお膝にぴょんと乗る、驚いてるがヨーンがスリスリすると段々と笑顔になっていく、そうだ、それでいい!それが動物のペットの役割だ!


((わらった、あたち、なんだかうれしい!))


 せや、メグちゃんと同じや、尻尾振って疲れを癒してあげるんだ、それはタダじゃない、ちゃんと愛情で帰ってくる。


((なんだかわかったきがする!))


「何だか急に元気になって、でも良かった……嬉しいよ!」


((うれちい!だいすき!))

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