犬が渡り歩く異世界
ラビッツ
第1話 それぞれの別れ
とある異世界に世界の歪みを正すために愛し子として落とされた人間から犬になったオレンジ毛のポメラニアンの愛し子きゅーちゃん。
そしてきゅーちゃんが拾った神の欠片を宿した神の子、白い毛色の子猫のみーちゃん。
仲良しだったケルベロスもどきのルルさんと言うモンスターや少女メグちゃん、色々な知り合いが長い年月を経て、天へ昇ってしまったのを見届け、神殿のお友達の巫女の千代さんが一世紀と百年経過した今、天に召されようとしているのを見届ける為に枕元で静かに見守る。
「きゅーちゃん、みーちゃん、貴方達が居たから幸せに逝けるのよ?悲しいかも知れないけれど、何時までも引きずってはいけませんよ?」
千代さん、俺達もうお友達作るの辛いよ、千代さんもずっとこんな気持ちで生きてきたの?
「そうね、出会いがあれば別れも当然あるわ、仕方ないのよ?でもね?どれだけ素晴らしい出会いがあったかを私は覚えて生きてきたの。悲しい思い出はずっと心に残しては駄目よ?それが長生きのコツかしら?ふふ」
千代さんはそう言い残して穏やかに笑いながら逝ってしまった。
「ンミィー……」にぃに、かなしいのもういやなの
そうだね、俺達も寿命が短ければ一緒に逝けたのにね?俺も悲しいのが続くのは嫌だよ。
(私も悲しいのは嫌です、千代さんは特別濃いお付き合いしてました、新しい巫女との出会いが待っていますが、今の私は上手くやっていけるか解りませんー。)
ポンコツ神様も大分人間の勉強したもんな、でもお前はポンコツだから、やっていけるよ、保証する、馬鹿だからさ。
(相変わらずヒドイですー!馬鹿にも感情はあるんです!)
なぁ、世界の歪みはもう直ったのか?
(スルー……ええ、もう落ち着いていますよ?どうかしたんですか?)
ならさ、もう俺は此処に居なくてもいいんだよな?
(え?な、何ですか?どうしたんですか?)
俺さこう言う事ずっと考えてたんだ、歪みが直ったら、他の世界に行きたいなって。
(ええっ!行きたいって……どうやって?)
お前に強化してもらった転移能力も百年で大分上達したし、他の世界に飛べそうなんだ、だから俺はみーちゃんと別の世界で出会いだけ求めて生きて行きたいんだよ。
(私は置いてけぼりですか?)
お前はここの神様だろ、何言ってんだ?
(うえー悲しいじゃないですか!嫌です!)
お前の意見なんて聞いてねぇ、俺はみーちゃんの為に生きてんだよ!
(ふぇー……ホントにホントに行ってしまうんですか??)
行くよ、お前とも楽しかったけどお別れするよ、俺達は別の世界で生きていく。
(……分かりました、本当に悲しいんですよ?それだけは覚えておいて?)
おう、分かってるよ、じゃあ行くよ。
「ンミー」ばいばいなの、ぽんこつー
(みーちゃん……はい、また会いたいです)
俺は何時かこういう時が来ると思って転移能力を磨いて来た、本能で行けるって分かったんだ、神の力がなかったら、きっと別の世界になんて無理だっただろう。
別の異世界のイメージなんて出来ないからギャンブル感は強いが、やってみるしかない。
「ミィミー」にぃにとなら、どこでもいいの
相変わらず俺の妹は可愛いな、にぃにから離れちゃ駄目だよ?
「ンミッ!」わかってるのー!
俺はみーちゃんをぎゅっと抱えて離れないよう首を咥える、じゃあな、ポンコツ。
(いってらっしゃいー……またね。)
では、覚悟を持って……転移!!
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