初心者マーク
まっく
海へ向かって
1
青い空が何処までも続いている。
快晴とは、まさに今日の日のようなことを言うのだろう。絶好のドライブ日和だ。
「彼氏の車の助手席に乗って、海に行くのが私の夢なの」
彼女は、ことあるごとに、そんな他愛もない夢を口にした。
その度に誠は「車の免許を取るには、お金も時間も必要なんだから」とか、「海なら電車でだっていけるし、渋滞もない」なんて、屁理屈を捏ねて、ずっとはぐらかしてきた。
それでも誠は、ありったけの愛を彼女に注いできたつもりだ。
だけど、一旦こうなってしまうと、もうどうにもならないようだった。
時が過ぎ行く速度と比例するように、彼女の口数は少なくなっていった。
誠が彼女の名前を呼んでも、
「どちら様ですか?」
と、まるで子供の意地悪のような返事をしたりした。
彼女の為に、下手なりに一生懸命に食事の用意をしてあげても、
「ご親切に、どうも」
なんて、他人行儀な受け答えをするようになった。
胸の奥のあたりが痛む。
もう、元の二人には戻れないかもしれない。
だけど、誠はこのままでは終わりたくなかった。
誠は、
彼女自身は、もう覚えていないのかもしれない。
それでも構わない。
ほんの一瞬でもいい。
以前の彼女を取り戻したい。
誠は、彼女の夢を叶えてあげようと決心した。
それからの毎日は、久しぶりに清々しく、充実した時間を過ごすことが出来た。
年寄りじみたことを言うようだが、つくづく人生とは張り合いが大事なんだと思った。
多少の苦労なんて、どうってことなどない。
彼女の夢を叶える為の準備は、着々と整っていった。
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