虚無・虚空

第1話

ヴォー、ヴォー、ヴォー

町の至るところにある警報器から一斉に音が上がる

避難指示をする声が聞こえる


『敵襲だ』


銃撃音も爆発音も悲鳴も上がる

巨大にして、強大な武力

例えるなら、『巨人』

そして、私達を守るのも『巨人』である

君はあの巨人の一部となり、敵と戦っているのだろう

私は逃げる事しかできない


数年後、戦いは終わった

お世辞にも綺麗に作られたとは言えない、

ボロく、

汚い岩の前に私はいる

私の膝程しかない岩

それには、君の名前が彫ってあった


君はこの下にはいない

なら、君はどこにいるのだろう

この世界か

もしくはこの世界とは違う空の下なのか


いくら探しても見つからない

どれだけ走っても追い付けない

君はいつも背中を見せるだけ

そんな君に最後の言葉を捧げよう


『君の事が好きでした』


その言葉だけが虚空に響いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

虚無・虚空 @1202279

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る