電車の中で聞こえた話

暗藤 来河

電車の中で聞こえた話

「だからさ、篠田は悪くなかったんだって」

「でもあの状況じゃ誰のせいだってなるじゃん」

「まあそりゃあな」

「そんで田村のせいには出来ないだろ」

「結局運が悪かったってことなのかね」

「仕方ねえよ。それより今度の試合はどうなんだよ?」

「おう、かなり仕上がってるよ。次は準決くらい行きてーよなー」

「なんだ、優勝目指してんじゃないのかよ」

「正直今年は無理だろうな。先輩達上手いけど人数少ないから。それで俺らが使ってもらえるのはありがたいけど」

「まあ大半が一年じゃ厳しいわな。……降りるのどこだっけ」

「二つ先」

「あー、そうだった。んで、来年以降ならって感じか」

「おう。ていうかあんな上手い先輩達と試合出て、他所の一年よりよっぽど試合経験も積ませてもらってんだ。勝てるようにならなきゃな。……あ、あそこのタピオカ屋潰れたのか」

「え、マジか。早いなあ」

「あーあ、結局一回も行ってねえや」

「そんなだから潰れたんだよ」

「そりゃそうか」


「それでその時西谷が膝やっちゃって」

「だから松葉杖ついてたんだ。小坂はどうしてたの?」

「あいつは真っ先に逃げたからな。転けたとこも見てないよ」

「さすが。あ、ここ西谷の最寄り駅だっけ」

「だな。今は車で送り迎えしてもらってるらしいけど」

「そりゃそうか。あの足じゃなあ」

「次の大会には間に合うみたいだけど、コーチが怒っちゃってさ。こんな時期に何してんだって」

「まあな。怪我は不良に絡まれたせいって言っても、そういう所に行ったのは自分だもんな」

「あれ、そういえばこの駅通るんだったか」

「……、いや、通ってなかったような」

「やべ、乗り間違えたか」


「海原さんとこのお店、ほんとにお好み焼き美味しかったよ」

「だから言ったでしょ。しかも海原さん、お店だとけっこう喋ってくれるし」

「そうそう。学校いるといつも疲れた顔してるから近寄りがたい感じだったけど、お店じゃ全然印象違った。常連さんみたいな人と楽しそうに話してて。私達にもちゃんと気配りしてくれてて」

「あれだけお店の手伝い頑張ってたら学校を休憩に使うのも納得だよね」

「でもお店行った次の日は、昨日はありがとう、ってわざわざ言いに来てくれたよ。ほんとにお店好きなんだろうね。……あれ、こんな駅通ったっけ?」

「ああ、この時間はちょっと経路変わるからね。ちょっと時間かかるけど大丈夫よ」


「やっぱ田村にも言っといた方がいいとおもうんだよな」


「そういえば最近小坂見ないな。あいつは怪我してないんだろ」


「ねえ、これどこ向かってんの」



「えー、ご乗車いただきまして誠にありがとうございます。この電車は終点天国まで停止いたしません。途中下車は出来ませんのでご了承下さい。それでは終点まで今しばらくお待ち下さい」

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