〝無能〟と呼ばれた元勇者、起死回生を図ります

土反井木冬

プロローグ

剥奪

 告げられたその言葉に、俺は顔を俯かせる。


「【勇者】神矢諒(リョウ・カムヤ)。今この瞬間より勇者の称号を剥奪する。即刻、この城から立ち去れ」


 眼前に佇む初老の男は険しい声でそう言い放つ。思わず呆然とする俺を見るのは、蔑む者、愚弄する者、嘲笑する者、心配する者。


そして。


「…諒くんっ!」


 俺に手を伸ばす者。


 彼女の声に応えたいが、それすらも敵わない。俺は両腕を掴まれ、〈玉座の間〉から連れ出された。




「さっさと失せろ、出来損ないめ」

「こんな奴が【勇者】だったなんて考えられねぇよ」


 俺を城門まで連れてきた兵士たちは、乱暴に俺の背中を蹴り飛ばす。


「二度と顔を見せんじゃねぇ、〝無能〟」


 最後に俺にそう吐き捨てて城内へと消えていく兵士たち。


俺は、その背中を見ていることしかできなかった。

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