秋空の下でピエロは泣く
はなさき
第1話 秋の訪れに(津久葉 晴)
秋の訪れ。それは、少し肌寒い気温になった時、金木犀の香りがしてきた時。紅葉の葉が紅くなった時。銀杏の木の葉が黄色くなる時。感じ方は人それぞれだ。
けど、俺にとっては違った。
秋の訪れ。それは、思いがある日がやって来た時。決まってカレンダーを見やる。そして、秋を感じる。
俺の名前は
自分で言うのもあれだが、俺はこんな性格じゃなかった。あの時から変わってしまったんだ。と、誰に言っているんだろうか。
俺は我に返り、リビングに足を向けた。
その時だった。
「
不意に俺の耳に届いた。声のする方へと向く。すると、母さんがいた。
「今日は休み。けど、ある場所に行くから夕方までいない」
俺は母さんの問い掛けに答えた。
「あ、そう。元気出しなさいよ」
母さんはそう言うと、その場から去ってしまった。なぜ、元気づけられたのか。それは……母さんは俺の過去になにがあったから知っているから。俺が責任を感じていることも知っている。だから、元気づけられたんだ。
俺は、身支度を整えると、外に出た。今日は俺にとって休みだが、平日だ。この時間帯なら、いつもと同じ、通学・通勤の人たちが歩いている。なんとも忙しい朝だ。
暫くして、俺はある公園の前に辿り着いた。子どもはいない。というよりも誰もいなかった。別の日だったら、高齢者が散歩にくらいは足を運んで来るだろうか。そんな想像をしていると、人がいない事に少しばかり寂しさを感じた。
それなのに、俺は躊躇うことなく、公園内に入る。そして、ブランコの板に座る。ゆっくり漕ぐと少しずつ揺らいでいった。
(こんな事がしたいんじゃないんだ)
俺は心の中で呟くと、直ぐに立ち上がった。そう、俺が向かう目的の場所はここ、公園なんかじゃない。
俺は公園から出ると、本当の目的地へと向かった。
アイツが居る場所へ。アイツは元気だろうか。会いに行けば分かる事なのだが、あんな姿を思い浮かべれば心配してしまう自分がいた。
俺とアイツは親友と呼べるほど仲が良かった。今でもアイツは親友と思ってくれているだろうか。俺はアイツにとって親友に相応しいと思えなくなってしまった。なぜなら、俺がアイツを……。
そんな事を考えると、どんどん深い沼にハマってしまうから、一旦止めることにしよう。
俺とアイツの話。それは、今から八年前の出来事に遡ることになる。
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