少年、異世界で社畜になる。
KO^茶
第1話 プロローグ
カリカリとペンを走らせる音が俺以外
誰もいない部屋に響く。
「んんー、昨日の収支はこんなもんか…てか
明らかに数字おかしいだろコレ、あのクソハゲまたギルドの経費勝手に使いやがったな……」
そう罵りつつ報告書を完成させる。
「さ、次だ次、まだ仕事残ってるからさっさと終わらせなきゃな。」
まぁこれ大半俺の担当じゃないんだけどね。
体を起こし背筋を伸ばすとポキポキと気持ちのいい音が鳴る。ふと外を見ると空が明るくなってることに気がつく。
時計を見るともう他の職員が出勤してくる
時間帯だ。
「……飯食うか」
そう呟きつつ、デスクの引き出しから軍御用達の
「………だいたい終わったな。やっぱスキル便利だわ……」
保存食のゴミを捨てつつ、仕事が終わった
達成感と別に心地よくもない疲労感にぐったりしていると部屋の扉が開いて、
ギルドの制服に身を包んだ一人の女性が入ってきて挨拶をしてくる。
「おはよう。随分早いのね。」
「おはようございます。アンナ先輩こそお早いですね」
「私はいつも通りよ?」
そう答えたこの人はアンナ・ベル先輩、
俺の指導係の人だ。常に冷静で仕事もサポートも完璧にこなす。俺も新人の頃お世話になった。今もたまにお世話になるけど。
ふと、先輩が鋭い目を俺に向けて聞いてくる
「あなた、一体何日目?」
「は?何がですか?」
思わずポカンとして聞き返す。
「だ・か・ら!一体何徹目かって聞いてるの!」
「えっ…と…」
思わず目をそらす俺にジトッとした目になっ
た先輩はゴミ箱の中を確認し始める。
「一、二、三…四徹目!何してるのよあなた!」
言い当てられドキッとする。
「なんで分かるんですか!?」
「ゴミ箱の中に保存食のゴミが一三個あるからよ、一日三食で4日分でしょ?残りの一個はさっき食べたんでしょ?」
先輩はゴミ箱指しながら言ってくる。
「う…はい」
言い訳のしようがなくうなだれる。
「はぁ…大方あのハゲに仕事押し付けられたんでしょ?今日は帰りなさい。」
「え、いやでも大して辛くないし、もう朝になってるし……」
「いいから!」
「…はい」
反論すら許されず言いつけられた俺は鞄に
荷物を詰め帰りの支度を始める。
「ギルマスには私から言っておくわ。今日は
ゆっくり休みなさい。」
「…あい、じゃあお疲れ様でした。」
「はい、お疲れ様。」
部屋の扉を開けて廊下に出る。誰もいない廊下を歩き、階段をのぼり自分の部屋へと入る。え?宿?自宅?ンなもんねぇよ。
鞄を机に放りつつベットに横になると眠気が襲ってくる。
「久しぶりに自分のベッド使うな、ずっと仮眠室使ってたしな。」
ボンヤリしながら呟く
「そういえば、こっちに来てからもうすぐ二年も経つのか…」
襲いくる眠気に抗いながらここに来たばかりの頃を思いだす。右も左もわからず、
一日を過ごすのが精一杯だった。
そして次に思い出すのはやはりあの時の事。
──俺達がこの世界の、この国に召喚され、俺が、こんな所で働くこと原因となったあの時──巷で流行っている『クラス召喚』に巻き込まれ、なぜか異世界に来てまで社畜と認定されたことを……
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