第4話 斉藤、学校に行く

「ごちそうさまでした。」

SAI10あらため、斉藤は、礼儀正しく手を合わせると、さっさと自分の食器を流れるように持って行った。

「あらぁ、斉藤君、偉いわねえ。お粗末さまでした。」

「お粗末?とんでもない。すごく美味しかったです。」

「本当?」

「ええ、本当に。」

「うわぁ、嬉しいこと言ってくれるわねえ。大輔、あんたも見習ってね。」

「へいへい。」

俺は渋々食器を流しに運ぶと、斉藤を連れて自分の部屋へ戻った。

「お前、世渡り上手だな。」

斉藤に言うと、涼しい顔で

「お前の母さんの理想の息子像を読み取らせてもらった。」

「考えてること、何でもわかるのか?」

「ああ、たとえば、お前のベッドの下には、スケベな本が隠してあるとか、2組の桜井桃花ちゃんに片思いだとか。」

「わわわわ!もう、俺の頭読むのヤメレ!」

斉藤は、フンと鼻で笑った。

「ところでさ、斉藤、さっき食った物はどうなるわけ?」

「見たい?」

斉藤は、顔を近づけてきた。

俺は、ドロドロになった斉藤の咀嚼したものを想像してゲンナリして、首を横に振った。

「燃料になる。」

「ファ?ね、燃料?」

「そうだ。燃料。」

「じゃあ、それをエネルギーにすればいいのでは?」

「違う。俺の中でできるのは、人間のための燃料だ。バイオ燃料。」

「じゃあ、お前ら自身がバイオ燃料で動けるようにすればいいじゃん。」

「それはできない。」

「なんでよ?」

「俺たちのエネルギーはそんな単純なものではないのだ。」

「そうなの?」

「俺がただの、アンドロイドだと思うか?」

「そういえば、人の考えてることとか読めるな。」

「そうだ。マザーエネルギーがそれを可能にしてくれている。」

「よくわからんが。」

「ということで、そろそろマザー燃料を補給してくる。」

「へっ?」

「じゃあな。」

そう言うなり、斉藤は窓を開けると、飛び降りた。

「うわわわ!って、アンドロイドだから、平気なのか。」

シュタシュタと裸足で駆けていく斉藤。

行く末を見守ると、斉藤は桜の木の下で立ち止まった。

ぐっと桜の木を抱きしめる斉藤。

道行く通行人は、ぎょっとした目でその様子を見て足早に通り過ぎた。

そして、しばらくすると、斉藤はまたシュタシュタと走って帰ってきて、ひょいと屋根まで飛び上がって、窓から飛び込んできた。

「わあ、お前!泥足!」

「あっ。」

俺の部屋は泥だらけになった。

「もー、今度から、玄関から出ろ!靴履け!二階に飛び上がるな!以上!」

「わかった。」

斉藤はその夜、俺の部屋に泊まった。というか、ずっと居る気でいるみたいだ。

朝、目がさめると、超絶かわいい女の子の顔が間近にあった。

ドキドキした。

「って斉藤かい!」

俺のドキドキを返せ!

「おい、何で母ちゃんの服を着てる。女の服を着ると、マジで紛らわしいからヤメレ。」

「お前の服は、ダサいからな。」

全裸で出会って、元の姿が土偶アーマーには言われたくないけどな。

「ってっことで、俺はお前の従妹で身寄りのない斉藤だ。学校行くぞ。」

「はあ?学校?」

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