第2話 全裸のAIを拾って帰った

SAI10は全裸だ。ややもすれば、通報されてタイーホ。

そうなれば目出度く俺はこのややこしい事態を脱却できる。

でも、こいつの鬼畜的能力を目の当たりにしてしまっては、俺は黙って見過ごすことができなかった。ややもすれば、この鬼畜的能力により、地獄絵図になるかもしれないのだ。

こいつが何者かは知らないが、目からビームが出たり肘からソードが飛び出したりするのだから、とても〇ッパーくんのような友好的な目的で作られたAIではなさそうだ。


俺は、とっさの判断で、自分の着ていた上着をこいつに着せてはみたものの、下半身は裸だ。運よく、こいつの背が低い所為でSAI10のジュニア自体は隠れているものの、下は素足で裸足。

案の定、こちらに歩いてくる母子が奇異な目で俺たちを見てきた。

「ねえねえ、あのお姉ちゃん、なんで裸足なの?」

「しぃっ!黙って!」

母親が慌てて我が子の口を押えて、足早に俺たちの傍を通り過ぎて行った。


あぁ、なるほど。

小柄で整った顔をしているので、女に見えなくもない。

髪の毛も薄い茶色で、耳も隠れているボブヘアなので、見えなくもない。

だが俺ははっきりと、こいつのジュニアを見てしまった。

道行く男たちは、SAI10が裸足なことには気付かずに、彼の端麗な容姿に見とれてあからさまに振り返っていた。


ああ、俺もお前らのような部外者になって、かわいい子連れて羨ましいみたいな、能天気になってみたい。


ようやく家にたどりついた俺は、とりあえずSAI10に服を貸し与えることにした。

俺が服を用意しているうちに、いつの間にか母ちゃんが帰宅していた。

そして、俺の部屋をいつも通りノックなしで開ける。

驚愕に目がめいっぱい見開かれる。

自分で服を着ようとしないSAI10に服を着せる俺。

そして、そこには下半身丸出しのSAI10。

この状況だけ見れば、母ちゃんのショックは測り知れない。

「あ、あんた達、な、なななな、何を・・・。」

「いや、母ちゃん、違うんだ、これは。」

「あんたにそんな趣味があったなんて。」

見る見る母ちゃんの目から涙が溢れてきた。

「ご、誤解だよ!違うってば!な、落ち着け、母ちゃん。」

わっと泣いて、顔を手で覆うと、部屋から出て行ってしまった。

「おい、どうしてくれるんだよ!この状況!」

「どういうことだ。」

「どうもこうもねえだろ!お前が早く服を着ないから、母ちゃん誤解しちゃったじゃないか!」

「誤解?」

「そうだよ。俺、ホモだと思われちゃったじゃないか!」

「ホモとはなんだ?」

「男同士で愛し合うことだよ!」

「男同士で愛し合っても、生産はない。」

「そんなことはわかってるよ!でも、世の中にはそういう人達もいるの!」

「不思議なものだな。」

「お前はとりあえず、パンツを履け!」

「わかった。この筒に足を通せばいいのだな?」

「逆じゃボケ!それじゃジュニアが隠れてねえだろ!」

「面倒だな。」

「それはこっちのセリフじゃ!これ以上面倒にするなよ!」

苦戦しながらも、SAI10に服を着せて、台所で泣いている母ちゃんに声をかけた。

「母ちゃん、誤解なんだ。こんなこと言って、信じてもらえるかどうかわかんないけど。」

俺はことの次第をすべて母ちゃんに話そうとしたその時だった。

泣いていた母ちゃんが突然、ケロっと泣き止んで俺の顔を見て微笑んだ。

「お友達、今日はご飯食べてくんでしょ?支度しなくっちゃ!」

「ファッ?」

後ろで俺の服を着こんだSAI10が腕を組んで母親を見つめていた。

「どういうことなの?」

「お前が面倒にするなと言ったから、お前の母に催眠をかけた。」

「えっ、お前、そんな能力もあるの?」

「とりあえず、俺はお前の友人で身寄りのない斉藤だ。SAIに10で斉藤。日本では一般的な名前なんだろう?しばらく世話になるからよろしく。」

「えーーーーーっ?」

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