鬼畜兵器 斉藤
よもつひらさか
第1話 出会いは全裸
ー満開の桜の花が散り始めた頃、その男はその木の下に佇んでいた。ー
美少女なら、どんなにこの場に馴染んだことだろう。
俺はあまりの異常な光景に、自転車で二度見したら見事にコケてしまった。
ズザアアア。華麗に自転車でスライディングしてしまった俺を見下ろすそいつ。
全裸だ。
しかも、男。俺と同じくらいの年齢か、少し年下くらいの少年。
背は低い。
「な、なななな?」
俺はわけのわからないことを口走りながら、慌てて立ち上がろうとした。
すると、その立ち上がった場所で火花が散り、一瞬にして草が焦げた。
「・・・はっ?」
プスプスと煙があがるその地面から恐る恐る見上げると、一瞬男の目が光った。
瞬間、男の目から何か出た。
「おわっ!」
瞬時に危険を感じて、飛びのくと、次は自転車のハンドルに当たってチュインという音とともに、ハンドルに穴が開いた。
「あわわわわっ!」
目からビーム出たっ!こいつ!嘘だろう?
こ、これは夢に違いな
チュイン!
思う間もなく、靴の先が焦げた。
「あ、あつっ!」
俺は慌てて、火のついた靴を脱いだ。
「ま、待って!お、俺は怪しいものではありません!や、やめっ!」
チュイン!
寸でのところで俺のズボンの裾を焦がした。
畜生!俺は怪しいものじゃねえ!むしろお前の方が怪しい!
春一番が、桜の木の下の花びらを舞い上げ、その少年の前髪をかきあげると、彼の額に何か文字が浮かんでいた。
『SAI10』
その少年は初めて口を開く。
「マザーを攻撃するものは許さない。」
そう言うと、かっと目を見開いた。
来る!
俺は、素早くそれを察知して、後ろにバク転を決めた。
すると、その少年は、片眉を吊り上げた。
「俺の攻撃を何度もかわすとは。お前、何者だ。」
それはこっちのセリフじゃ!
「お、お前こそ!何者だ!」
「俺はSAI10。Special artificial intelligence 10。」
「ファッ?」
何、その中二臭い名前。
「えーっと、つまり、お前さんは、自分をアンドロイドだと?」
「お前はまだ、俺の質問に答えていない。お前は何者だ。」
「あぁ、俺?山田大輔。」
シュワンッ!SAI10と名乗る少年の肘から何かが飛び出した。
ブレードのようなものが、喉元に突き付けられた。
「そんなことは聞いていない。計算しつくされた俺の攻撃をかわすということは、お前はエイリアンなのだろう?」
おい、ちょっと待て。誰がエイリアンだよ。そのまま言葉をそっくりブーメランで返してやりたい。
「俺は逃げ足が速いだけの人間なの!」
「嘘だ。」
「本当だってば!」
俺は何からも逃げるのは早い。運動神経だけはいいが、面倒にかかわるのはごめんだ。
どんな部活動からの誘いも受けないし、どんな不良からも素早く逃げる自信はある。
口論しているうちに、急にその少年はがっくりと膝を折って倒れた。
「お、おい?」
そのままその少年は全裸で倒れたまま動かなくなった。
逃げるなら今のうちだ。
俺は、そんな考えがよぎったが、苦しそうに顔を歪めるそいつをどうにもそのままにしておけなかった。
「どうしたんだよ。しっかりしろ。」
そう声を掛けると、SAI10はうっすらと目を開けた。
「エネルギーを使いすぎたようだ。すまん、俺を桜の木まで連れて行ってくれ。」
俺は仕方なく、そいつに肩を貸すと、よろよろと歩きながら、桜の木の下まで連れていった。
SAI10は、桜の木の幹に手を当てると、スーハーと深呼吸を始めた。
するとSAI10の体は、真っ白な光に包まれた。
とてもまぶしくて直視できない。
ようやく目を開けると、そこには、光り輝くSAI10が立ちはだかっていた。
「すまなかった。俺は、お前を誤解していたようだ。」
SAI10は、さわやかに笑ったが、全裸だ。
「とりあえず、服、着ようか・・・。」
俺は自分の上着を彼の肩にかけた。
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