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 僕の目の前に現れたのは今まで見たことも想像もしたことも

ない巨大な物体だった。

 重厚そうな深緑の外観に対しサイドにはまん丸く可愛いい小窓が

連続し、それが最後尾まで続くなんとも美しいフォルムが印象的だ。

 呆然と見つめる僕の目の前にある列車のドアが静かに開くと

夏とは思えない冷風が僕の体全体を包み込んだ。

 恐る恐る車内に足を踏み入れると上品な小豆色の布にくるまれた

長椅子が両サイドに並べられ、見た瞬間僕のテンションは急上昇して

しまい思わず椅子に向かってダイブしてしまった。

 凄いな―! フカフカしてなんて気持ちいいんだ!

 でもソラちゃんにとっては普通なのかな? いや、普通じゃ

ないよなっ、きっと。

 それにしても上から来る風はナゼ冷たいんだろ?

 僕はおもむろに立ち上がり通風口を覗き込むも奥が見えないため

理解出来なかったが近くに設置してある青白い光を発する透明の筒に

関してはなんとなくだが分かったような気がした。

 ははぁ~ん、虫だな、これは。ホタルみたいな虫を使ってるんだな

きっと、うん! そうに違いないよ。

 このやり方ウチの村でも早速使えるな。今までみたいに焚火じゃ、

危ないもんね!

 ん? なんだこの丸いワッカは?

 そっか~ これに両手を掛けて腕を鍛えるんだな、きっと。

 僕は早速ワッカを掴み力を入れようとした瞬間、突然発車を知らせる

ベルの音がホーム内に響き渡った。

 

〈ジリリリ――ン!〉〈ジリリリ――ン!〉


「ビックリした―!」

 思わず口に出してしまったと同時に扉がゆっくり閉まり、列車は

コトコト動き出し暗いトンネルに向かうと急に加速し始めた。


「うあぁ――!」お尻が急にこそばゆくなるのを感じ、初めての感覚に

魅了された僕だが出発以降終始真っ暗な景色を遂に諦め、長椅子に横たわり

そっと目を閉じ列車の加速音、風切り音のハーモニーを楽しむことにした。

 列車は最初の停車駅でもある13番駅に停車し、その後さらに速度を

上げ15番駅に停車した。

 扉がゆっくり開いたが不思議なことにその後いっこうに閉まる様子

がなく呆然とホームを眺めていると上部からアナウンスが流れ出した。


『お客さまにお詫び申し上げます。現在車両の点検作業を実施中で

ございます。発車まで今しばらくお待ちください』


「なんだよ~」と僕は列車を下り改札方面に向かおうとしたがいつ

点検が終了するか分からないのでしばらく列車の構造を観察する

ことにした。

 

「えっ!」 


 再び背後から視線を感じた僕は瞬時に後ろを振り返ってはみたが

結局何も確認出来なかった。

 しかし先ほどといい今回といい誰かに監視されている事だけはほぼ

確実のようだ。

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