サウナに行くにあたって

 こうして私は武士と共にサウナへと赴くことになった。


 前提として述べておくが、私は暑さに弱い。かといって寒さに強いわけでもない。どこへ出しても恥ずかしくない軟弱なサラリーマンだ。

 恥ずかしいな。


「さうなは某の故郷の風呂を思い出させる。薄暗くて蒸し暑くて……あんまり長くいたくない」


 しみじみ語る武士だが、サウナのメリットは殆ど見えなかった。

 つか実際どうなのよ。なんとなくサウナっていったら「整う」とか「ロウリュ」とかって言って意識高い人が自律神経をフラットにしてるイメージなんだけど。


「某の行きつけのさうなにはくたびれた中年しかおらんぞ」


 よし、お前のサウナ感は信用できる。もっとサウナへの敷居が低くなる話をしてくれ。


「サウナ内にテレビが備えつけてある」


 いいぞ。常人はただ暑いだけの部屋に何分もいられないからな。


「風呂から出たらすぐびぃるが買える」


 最高だ。せっかくサウナに入ったのに健康意識を遥か後方に置き去りにしている。サウナ後の水分補給は必須だがアルコールは脱水症状を促進させるからな。

 でも喉乾いてる時のビールめちゃくちゃうまいんだ。


「フロアの畳には湯気を出した中年達がごろんと横たわり胡乱な目でテレビを見ている」


 素晴らしい情報をありがとう。みんな仲間だ。


 ……うん、いい感じにサウナへの敷居が整ってきた。でもさ、今更なんだけど、なんでわざわざ暑い思いしに行くの? ただでさえ今夏は史上最強の暑さって言われてるのに。


「熱して冷やす。極限の環境に身を置くことで、自らの肉体に命の危機を思い出させてやるのだ」


 それ何の意味があるわけ?


「生きてるぞ! という気持ちになる」


 生きてるぞ! という気持ち。


「生きている実感は清々しい」


 なるほど。

 ……根本的な質問になるけど、サウナ、体にいいの?


「……」


 微笑むのみに留めるな!!




 インターネットの意見を収集したところ、健康な人が用法用量守ってやる分にはいい効能が得られるそうです。よーし! 敷居を低くしまくったサウナ、行ってみるぞ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る