武士の創作
途方に暮れるほど忙しかったり、武士がふわふわっと再発の兆候を見せたり、まさに光陰矢の如しで時間が過ぎている。心はまだ2023年の秋ぐらいにいるのに現実は2024年の一月半ばとか嘘だろ。違った二月か。私はもうだめだ。
おかげでなかなか趣味に時間を割けないまま、気づけば布団にいる生活を送っている。
まあ、武士ウォッチングを趣味のひとつに数えるなら話は別だが……。
「できた!」
武士が意気揚々と声をあげる。三連休最初の日、ヤツは何やら朝からこちゃこちゃやっていた。用意していたのは紙粘土とアルリル絵の具。
覗いたそこにあったのは、とぐろを巻く黄色い塊だった。
……何これ……。
「バナナだ!!」
そうかバナナか……。
バナナか?
バナナってとぐろ巻くもんだったっけ?
「いや?」
違うんじゃねぇかよ。じゃあこれは何なんだよ。
「バナナだ」
バナナはとぐろ巻かねぇだろがよ。
「だからこそ生み出したのである。この世界になくとも創り出せる……これこそ創作の醍醐味ではないか?」
なるほどな。お前もいいこと言うじゃん。
生み出したのがとぐろバナナでなきゃな。崇高な理念からなんでよりにもよってコイツが爆誕したんだよ。
「芸術は時として理解されえぬものである。誰も悪くない、某に時代が追いついておらぬだけなのだ……」
江戸時代から現代にタイムスリップしてる身じゃもう時代のせいにできねぇだろ。
とぐろバナナは乾燥させたのち、玄関に飾られることになりました。明日から帰ってくるたびコイツが出迎えてくれるのかと思うと複雑です。
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