またヤツの季節ですよ

 武士は、相変わらず薬を飲みながらのんびりと日々を過ごしている。軽めの家事ならできるぐらいになってきたので、私もちょっと楽になった。


 のだが。


「ぬ、カメムシ」


 パジャマを運ぼうと持ち上げた時、ころりと緑色の塊が転がり出てきた。絶叫した。私は、冬になったら出てくるこの緑の虫が大嫌いなのである。


「バタしたぞ! バタはしたぞ!」


 必死で武士が弁解するが知ったこっちゃねぇ。現にここにいる事実に変わりはないのだ。

 つーかバタって何よ! 洗濯物振った回数!? じゃあせめてバタバタだろ一回じゃ足りねぇんだよ敵には鉤爪ついてんだぞ!!


「つまり、2バタと」


 いや、5バタ!


「6バタ!」


 7バタ!


「むう、8バタか。ならば某の負けだ……」


 何が始まってたの!? どういうルール!?


「やむなし。では某が、この虫ケラを厳しき外の世界に送り出してこよう」


 お、おお、頼むわ。助かります。


「ぬ、ポイと投げた拍子に飛んでまた入ってきた」


 ぎゃー! ふざけんなよ!


「飼うか?」


 うちでは飼えません! 捨ててらっしゃい!!


 暖を求めて潜り込んでくるのは、可愛い彼女かペットと相場が決まっているのである。ほんと、どこの馬の骨ともしらない虫殿にはご遠慮いただきたいところだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る