月より団子

「大家殿! お月見をしようぞ!」


 そう言うと、武士はスーパーで買ってきたと思われる月見団子を山ほど私に見せてきた。いやあ、たくさんあるなぁ。あんだんごにみたらしだんご、三色団子にあんころもちまで……。

 うん、その上でね、お前に聞くけどね。


 私、明日健康診断だっつったよね?


「だからなんだ!」


 だからなんだじゃねぇんだよ、食っちゃダメなんだよ!

 いや食ってもいいんだろうけどさ、気持ち的にダメじゃん!


「今更無駄な抵抗でござる」


 わっかんねぇかなぁー、この繊細なリーマン心。ちょっとでもいい結果を残したいっていう、この、ね?


「もぐむしゃ」


 あーあー、もう二本食べた。みたらしだんごが残り一本になった。


「残りは明日の朝ごはんは団子にする。一粒残らず団子が食い尽くされていく様(さま)、大家殿は指を咥えてみているがいい!」


 うん、前の晩八時から何も食べちゃいけないからね、私。たとえお前が何食べてようと指咥えて見てなくちゃだから。

 あー、断食! よりにもよってお月見に断食! つーらっ! 辛っ!


「……健康とは一朝一夕のものではないから、大人しく食えば良いのに」


 武士の正論が耳に痛い今日この頃である。

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