映画

 この世界の片隅でぼっちである。


「某がいるぞ!」


 武士がいなけりゃぼっちである。

 ってことは、実質ぼっちじゃねぇのか。いや、江戸時代からタイムスリップしてきたお間抜けザムライがいなきゃぼっちって、ヤベェな自分。

 でも今に始まったことじゃないので、平気である。


「大家殿、映画を見たい」


 そして、武士が何やらおねだりをしてきた。映画? また突然だね。


「うむ。見たい」


 そういや以前、一緒にクレヨンしんちゃんの映画を借りてきて見たよね。あれに味を占めたのかな。

 そう思って詳しく聞いてみると、特に見たいものがあるわけではなく、じっくり眺めて選んでみたいのだそうだ。


「紙芝居なら江戸にもあったのだがな。某、実はあれも好きだった。ぜひ金があったなら、専任の紙芝居を家に雇いたかったのだが……」


 子供に混ざって紙芝居をワクワク鑑賞する武士の姿が、びっくりするぐらい簡単にイメージできた。





 そんでやってきました、TSUTAYA。噂に聞く所によると、最近なかなかレンタル業も厳しいらしいね。おうちでお手軽、かつ簡単に見られるようになっちゃったから。ご時世がらもあり、わざやざ足を運んで選びに来る人は減ってきているのだとか。

 でも、本屋にしてもそうだけどジャケット眺めるのって楽しいんだよな。借りられてる数で人気度具合を見たりさ。

 現在の私のお気に入りは、サスペンスの棚である。『バタフライ・エフェクト』は早く見なきゃ見なきゃと思いつつ、見てない。あと『十二人の怒れる男』も面白いらしいね。『パラサイト 半地下の家族』も見なければならない。あーーーー面白そうだな、もう!


「大家殿、大家殿」


 何を借りようかとニヤニヤ選別していると、武士がちょんちょんと肩を叩いてきた。その手には、一枚のDVD。


「某、これが見たい」


 ほうほう、何かな。アンパンマンかな、クレヨンしんちゃんかな。はたまた何かしらの戦隊モノ……。


「まっどまっくす」


 怒りのデスロード!!!!


「屈強な男が悪を挫き弱きを助けるのだろう!? 某、そういうの大好き!!」


 私も大好き!! よーし、借りちゃお!!


 勢いで借りて、その日のうちに見ました。


 めちゃくちゃ面白かったです。凄まじい世界観と息もつかせぬ怒涛の展開に流されているうちに時間が一瞬で過ぎました。見終わったあと、批評家気取りで十点満点評価をつける遊びをしようと武士と話していたのですが、気づいたら手が勝手に「10」と書いてました。武士も同じでした。

 この勢いで、次はインド映画も見ようと思います。


「屈強な男が悪を挫き弱きを助け歌い踊るのだろう!? 某、そういうの大好き!」


 私も大好き!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る