手作りマスク

 マスクをね、手縫いしてみてるんですよ。


 家にあるマスクがとうとうストック無くなったんで、高校生の時に使っていた裁縫セット(ドラゴン柄)(クッソカッケェ黒いやつ)を引っ張り出して、適当な布でマスクを作ってみた。


 布マスクは紙マスクに比べたらウイルスに対して効果は薄いとか何とか聞いたけど、やっぱ無いのとあるのとではある方がいいよね。どうしても外出しなきゃいけない時、つけてたら周りの人もちょっと安心するだろうし。おなべのふたでも装備してるのとしてないのでは大違いだ。


 というわけで、一枚完成した。


「……」


 ので、武士につけてみた。


「……大家殿、これは……」


 うん。


「……猫柄と聞いておったが……」


 うん。

 猫柄。


「……某は、可愛い猫の模様が散らばっているものだと思っていたのだが……」


 うん。

 違うよ。

 リアルな猫の口元柄だよ。

 髭も再現されてるよ。

 それしか布が無かったんだよ。


「……」


 何その目。

 いいじゃん。よく似合ってるし。

 これからどうしても外出する時は、そのマスクをつけるんだぞ。


「……にゃー」


 かっわいくねぇなお前。


「しかし、このマスクだと人目を引いてしまうではないか」


 ちょんまげってだけで十分人目は引いてんだよ。

 大丈夫だって、都市伝説に多少の情報が追加されるだけだよ。化け猫侍がランニングしてるっつって。


「ふむ、耳と尻尾は無いのか?」


 俄然乗り気になりやがった。お前の乗り気スイッチどこにあるかわかんねぇな。

 ともあれ耳と尻尾は無いから、自分で作るか自力で生やすかしてくれ。


「ぬうっ」


 そうそう、念じてみろ。上手いこと願いが通じたら、五回ぐらい生まれ変わった後猫になれるかもな。


「……ちょっと警官殿に自慢してくる」


 だから外出んなっつってんだろ!

 あ、会っても二メートルの間隔を開けるんだぞ! そしてできたらあまり話さず、遠くから自分のマスクを指差す形でだな……!


「それはもうどこからどう見ても妖怪ではないか」


 そうだな。

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