ぷるつや

 ある日、武士のジャージズボンに、なんか黄色い汚れがついていた。


 ……おい、武士。


「ぬ」


 何その汚れ。


「ああ、これか……」


 おう、それだ。


「……」


 ……。


 武士と見つめ合うこと、きっかり三秒。

 武士は言った。


「……これは、きなこにやられたのだ」


 きなこ。


 ……きな子!? 誰よその女!?


「む、口が滑ってしもうた!」


 アタシというものがありながら! アンタってばまた別の女に手を出して!


「違う! 誤解である! 誘ってきたのは向こうの方なのだ!」


 言い訳にならないわよ!

 一体どんな女なの!?


「むむむ、透明感があり、ぷるぷるとした肌の……!」


 ハンッ! その表現だとさぞかしぷるつやの食べがいのある子だったのでしょうね!?

 もっちもちだったのでしょうねぇ!?


 キィィッ! 今日という今日は許さないわよ!


「堪忍でござる! 某にはお主しかおらんのだ!」


 問答無用、切捨御免!

 者共、であえっ! であえーいっ?


「ぐあああああっ!!」


 ……。


「……」


 ……ま、わらび餅美味しかったなら何よりだよ。

 着替えておいで。


「うむ、かたじけない」


 うん。


「そうだ、大家殿」


 はい?


「最近、ネタが無いと言っておったが、これはネタになりそうか?」


 いっちょまえに心配してんじゃねぇわ。

 ネタにするよ。ありがとね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る