ながら運転
“ながら運転”が厳罰化しましたね。
どうでもいいんですが、最近「タクシー運転手」を「セクシー運転手」と空目してしまうんですよ。“プロであるはずのセクシー運転手がオセロゲームに熱中”。いやプロのセクシー運転手ってなんだ。峰不二子とか乗ってるのか。運転そっちのけでオセロゲームに熱中する峰不二子。可愛いな峰不二子。
だが捕まる。
なぜなら運転中にオセロゲームの画面を二秒以上注視しているからだ。
「大家殿、彼女はそもそも盗っ人であるから、ながら運転以前の罪で捕まると思うぞ」
そうだった。歩いてる所見つかっただけで逮捕されるレベルに色々やってたわ、あのお姉さん。
とにかく、ながら運転厳罰化である。
こちとら営業で車もバリバリ乗るので、無関係ではない。特にカーナビ。
ひとたび知らない場所へ行けば右も左も分からない幼児になる私にとって、カーナビは実に心強い味方である。勿論今後もべったり依存していく所存だが……。
これも運転中に二秒以上見てはいけない。
オーケーオーケー頑張る。耳研ぎ澄ませる。危ないもんね、実際。
赤信号中の操作はいいらしいから、その間にガン見することにしよう。ものすごく周りに気をつけてガン見する。
まあそれはいいとして。
武士よ、私が運転中に苦手とするものがあるんだが、聞いてくれるか。
「なんだなんだ」
狭い道あんじゃん。
そこを車がすれ違う時って、どっちかがちょっと広い場所で相手の車がやってくるのを待ってたりするんだけどさ。
「うむうむ」
これ通り過ぎる瞬間ね。
片手をスッ……って上げんの。
もしくはお辞儀。
もしくはクラクションぷー。
「ほうほう」
これが苦手です。
「挨拶が下手なのか」
営業マン舐めんな死ぬほどうめぇはそこは。
違う違う、すれ違う瞬間にそれするのが苦手ってんだよ。
「そうなのか」
うん。
ただでさえ狭い道に神経使ってんのに、すれ違う一番大変な瞬間に片手上げて挨拶とかもうサーカスでするヤツだから。
空中ブランコだから。
「しなければいいではないか」
ダメなんだよー。
なんか「ありがとう」は伝えたいんだよー。
「うぬ……」
私のクレームにしばらく考えていた武士だったが、やがて思いついたように顔を上げた。
「あれだ、それはもう専用の仕掛けを施すしかないな」
専用の仕掛け?
「礼をしたいという気持ちが高まれば、勝手に車とやらが動いてくれるのだ」
ふむ。聞こうか。
「そうだな。車のぷーはうるさ過ぎるからな。にゃー、と言ってはどうだろう」
……にゃー?
「にゃー」
……。
……なるほど。
名案だな?
「だろう?」
それなら尻尾もつけたらどうだろう。車の後ろに。ふかふかの。
「ああ、良いな。しかも左右に揺れるのだ」
え、どんな時に?
「運転しておる者が嬉しい時に」
ご機嫌なお歌熱唱してるのバレちゃうじゃーん。
「ここまできたら耳も欲しいな」
えぇー? 耳までつけちゃう? どんな動きすんの?
「特に意味は無い。可愛いだけだ」
最高かよー。
トラ、ミケ、黒、白、ぶち、と選べたらいいな。カスタマイズできるんだ。
「愛らしき車道になるな」
本当になー。
……。
まあ、事故を起こさないように気をつけるよ。
「うむ、詰まるところ、そういう話だ」
そういう話でした。
法を守り、驕ることなく、気をつけて運転する次第である。よし、今日もまとまった。
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