地図
地図を見せてみた。
「おお……? これは……ほお……」
しばらく興味深げに見るかと思っていたが、案外早めに切り上げてテレビをつけた。
「しかし見方が分からんことには、どうしようもないぞ」
ちょんまげを引っ掴んで事情を尋ねたら、そんなことを言われた。
まぁそれもそうだな。
少し揉めたがテレビを消させ、また地図の前に座らせた。
武士が今住んでいる所を指差し、日本はとんでもなく広いんだぞと教えてやる。いわんや外国をや。
武士は「ほうほう」と聞いていたが、やはり録画していた『天空の城ラピュタ』が気になるようで、チラチラとテレビを見ていた。
いや、私も好きだけどね、ラピュタ。
この歳になっても、やっぱ見始めたら最後まで見るからね。
「大家殿」
ラピュタを諦めて地図に専念することにした武士は、世界地図の端を指差して言った。
「この場所の先は、図の反対側のここに至るのか?」
お、よく分かったな。
驚いていると、武士は得意げに笑った。
「某とて、この世は丸くできておるということぐらい知っておる。それなりに書も読んできたからな」
ちょっと感心した。
が、なんでそれ知っててちょんまげの由来知らねぇんだよコイツ。
彼にしてもそこを突かれると弱いのか、落語の出囃子で聞いたような鼻歌を歌ってごまかしていた。
あんま上手くねぇな。
「しかしなぁ、船に乗り続けて同じ場所に辿り着いたから良かったものの、果てが底無しの崖になってたらどうする手筈だったのだろうな」
饅頭を頬張りながら、武士はまたテレビをつけようとする。私ももうそれを止めようとはせず、饅頭を手に答えた。
――さぁなぁ。そこはやっぱり、試しに降りてみるんじゃないのかな。
すると、武士は何故か嬉しそうにしていた。「日本男児たるもの、冒険心というのは止めがたいものよのう」と、パズーに向かって話しかけていた。
何か共感する所でもあったのだろうか。
だが武士よ、パズーは日本人じゃないぞ。
今度、ワンピースを読ませてみようか。
とても食いつくような予感がするのであった。
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