第22話 ウリ坊系ヒロインは当馬ポジをご所望です
初の王宮訪問の場にて、憧れのシャーロット様、並びにその双子の兄君であるルイス様と『3人だけの秘密♡』を共有した私は今、猛烈に悩んでいた。
それは、『シャーロット様って実はライアン様のこと好きなんじゃない?』疑惑が浮上したからである!
(考えてみればただの幼なじみの為だけにあんな惜しみない努力なんて出来ないよね!?こないだなんてライアン王子の部屋でだ、抱き合ってたし……っ)
その時の光景を思い出し、改めて思う。
演劇の日にライアン王子は確かに『私とシャーロットは恋仲ではない』と言っていたけど、シャーロット様の方からは特に何も言われて無いことを。
前世のネットでよく見た言葉がある。
『否定しないのはすなわち肯定と同じだ』
思えば、シャーロット様は私が付きまとってるとき以外は常にライアン様としか居ないではないか。これはもう確定である。
そもそも悪役令嬢がメインヒーローに片思いなんて王道!鉄板!!張り込みでアンパン食べてたら飲み物は牛乳レベルの常識なのだ。なのに今の今まで気づかなかっただなんて、シャーロット様親衛隊隊長としてあるまじき失態である。
「しかもあの鈍感王子はそんなことには気づかずに私なんぞに求婚してくるし……っ。このままではシャーロット様にとって私はただのお邪魔虫だ!そんなのヤダ!!」
「ミーシャ?先程からブツブツ言いながらそんなに考え込んでどうしたんだい?料理が冷めてしまうよ」
「ーっ!!お父様!ぜひ結ばれて頂きたい男女を後押しするためにはどうしたら良いと思いますか!?」
一瞬ぎょっとしたお父様は、甘い美貌に苦笑を浮かべてそうだなぁとフォークを置いた。
「学園のお友達の恋でも応援しているのかい?身分やお立場的に障害のない方々ならばまずは外堀を埋めてしまうか、とりあえず二人の邪魔となりそうな異性を当人達に近づけない事ではないかな」
「ーっ!」
そ・れ・だ!!!
ようは後一年半の期間に私が恋人を見つけてライアン殿下からの求婚を突っぱねればシャーロット様は問答無用で次期王太子妃だ。周りの評価からしてもう既に外堀は埋め立て完了だろうしね。
初恋の気配すらない私の恋人に関しては一旦置いといて、先にすべき事は見つかったわ!
「ははは、何だかんだミーシャも女性だね。他の方の恋を応援するのはいいが、自分の未来も考えるんだよ?ライアン殿下からの打診についてはミーシャとしては本音は……」
「こうしちゃ居られないわ、早速準備しなきゃ!」
「あっ!ミーシャ!お父様の話を聞かないか!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、放課後。今日は偶数日だったので一日たっぷりシャーロット様を堪能した後、私は二人で同じ馬車に乗り込んだライアン様とシャーロット様を満面の笑みで見送ってから中庭にやってきた。
去年の入学式の日、私が二人との出会いを果たしたあの場所である。
「ふっふっふ、背景グラフィックの関係でこのゲームの初対面イベント発生はこの中庭がダントツに多いのさ!こればかりは開発スタッフの惰性に感謝だわ!」
私は今日から、ライアンとブレイズを除外した残る攻略対象全員と出会う!そして攻略ルートに入ったと見せかけて……。
「彼等に片思いしてるライバルキャラ達を焚き付けて、恋のキューピッドになるのだ!!」
なかなか煮えきらない関係の男女を嫉妬等のスパイスで盛り上げてカップル成立の起爆剤の一つになるキャラクター。人は、それを当馬と呼ぶ!
(ヒロインで有る私が当馬側になれば、ミシェルの時みたく必然的にライバルキャラだった子達が好かれる側になる筈!)
元々貴族の坊っちゃんお嬢さん方で溢れかえってるこの学園。正直、幼少期からの婚約者が居ない人のほうが少ない。それこそ完全にフリーなのなんてゲームの
つまり、他の攻略対象がライバルキャラ達とくっつく→ライアン王子と釣り合う身分で独り身の令嬢が居なくなる→ライバルも居なくなりシャーロット様の恋路は安泰!
(上手く行った暁にはシャーロット様に褒めてもらえて、あわよくばお付きの侍女とかになれちゃうかもしれない)
「ふへへへ〜、そうなったらあの可愛いメイド服着てシャーロット様のお支度とかしちゃうのかぁ。いやぁ、何か照れちゃうなぁ」
なんて、攻略対象の出現を待ちながら一人妄想に耽ること3時間。結局、日暮れまでただの一人も来なかった。
更に1週間後。
「どーして誰も来ないの!パラか、パラメータが足りんのか!!」
今日も今日とて中庭で待ちぼうけな私は、持ってきたアンパンをヤケ食いし、牛乳で一気に流し込んだ。
「むーっ、生徒名簿で確認した感じ皆ちゃんと学園には来てる筈なのになぁ。いっそ私から教室とかまで会いに行っちゃう?いや、それもブレイズん時みたく変なフラグ立ちそうでヤダなー」
じゃあここ以外で攻略キャラ達が来そうな場所で待ち伏せる?となるとキャラを決め打ちしなきゃいけなくなるなー。ライアン王子とブレイズを除くと後は、秀才にショタっ子か。
とりあえず……ショタっ子は性格も扱いづらいしアイツのルート色々問題ばっかだからパス!
となると先に秀才君かな、図書室とか行って見るか…………。
「そもそも出会いイベントの流れとかそんな細かくは覚えてないしなー。どーしたもんか……」
「なーに一人でブツブツ言ってんの?」
「みぎゃーっっっ!!?」
一歩踏み出した途端ざわめいた木から逆さ吊りに現れた人影に心臓が飛び出るほど驚いた。何々、何事!?
「あっはははははっ、いい反応!期待してた通りだねっ」
「そりゃいきなり木から人が降ってきたらビビるでしょ!いきなり何するっ……の、よ……」
激おこで顔を上げた瞬間相手の顔を見て言葉を無くした私に対して、着地した美少年がそれはそれは愛らしく微笑んだ。
「やぁっと見つけた。お城じゃ全然手がかり無かったのにまさか同じ学園の生徒とはね〜。ねぇね、面白いお姉さん、ちょっと僕とお話しようよ」
『僕、貴方に興味が湧いちゃった!』
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