第3話 傭兵、仕事に就く
「合格ですか。で、護衛対象はそちらのお嬢様でいいですね?」
合格発表を聞いてひと安心したところで俺は確認する。燃えるような真紅の瞳に雪のような純白の髪、それに陶磁器の様な白い肌をした少女が挨拶する。
「私はエレアノール。エレアノール=ドートリッシュと言います。これから私の身辺の警護をよろしくお願いいたします」
ニコリと笑いながら彼女は自己紹介した。
「で、あなたは?」
「ああそうだな。自己紹介が遅れたな。私の事はグスタフと呼んでくれ。これからは私の指示で動いてくれ。よろしく頼むよ」
「分かりました。よろしくお願いします」
こうして無事に俺の就職先が決まった。
辺境への引っ越しなどのもろもろの手続きを終えて1週間後……
顔合わせという事でグスタフのオッサンに待機室へと案内された。中に入ってみると5人の男たちがいた。
「コーネリアス、君は彼らと共に行動することになる。お互い仲良くしてくれ」
「はい。分かりました」
俺がその5人を見た瞬間、その中のピンク色の鎧という派手なものを着た1人が声をあげる!
「コーネリアス!? お前コーネリアスじゃねえか!」
「お前!? まさか、アンドリューか!?」
「ん、どうした? 知り合いか?」
「え、ええ。まぁ……知り合いというか腐れ縁というか、そんな奴です」
「オイコーネリアス、腐れ縁はさすがにないんじゃないのか? 無二の親友とまでは言えないけどさぁ」
アンドリュー。鎧をピンク色に染めている悪趣味だが父親仕込みの剣術で俺の目線からしても腕の立つ男で、俺とほぼ同じ時期に傭兵になった剣士だ。俺と同じくらい長く生き残っているここら辺では結構な古株に入る。
戦場では敵対したり味方になったりと何かと縁がある男だ。こいつの父親は
「コーネリアス。ここでは俺が先輩だから敬えよな。分かったか?」
「へいへい分かりましたよアンドリュー先輩殿。ご指導よろしくお願いします、って言えばいいのか? 言っておくがお前に貸した『借り』のチャラにはならねえからな」
「やれやれ、手厳しい後輩だなぁ。できる先輩ってのもつらいもんだなぁ、うん」
「この野郎……人様が下手に出ればつけあがりやがって」
「2人とも、その辺で止めないか」
「あ、すいません。グスタフさん」
そんなちょっとしたトラブルはあったものの、打ち合わせをした上で仕事が始まった。
ボディガードという仕事上、自由にトイレや食事、水分補給が出来ないという制約はあるし、
仕事中は常に気を張り詰めなければならないという点はキツいが、正直言ってだいぶ楽な仕事だ。
シフト制ではあるものの働く日は週4日。しかも食事と住居の提供をしてくれる上で給料も良い。
休みが不定になりがちの勇者パーティーとは違って休みが保証されてるのはかなりでかい。と待遇はかなりいい仕事だ。
仕事を始めてから1週間後……仕事に慣れてきたであろう時期を狙ってグスタフのオッサンが話しかけてきた。
「どうだ? 仕事には慣れたか?」
「ああ、グスタフさん。おかげさまで。トイレに自由に行けないってのが意外ときついですけど」
「まぁそうだろうな。ところで何か気になることはあるか?」
「辺境ですから王都に比べれば娯楽は少ないですね。あとは……ちょっとボディガードの数が多すぎるとは思いますねぇ。一国の王子の
「ふむ、鋭いな。私からもこれ以上雇ったところで、もてあますだけだろう。とは言ったのだが、お嬢様がどうしても雇いたいとおっしゃってな」
ドートリッシュ家は
なぜなら辺境に住むクマやオオカミなどの猛獣をはじめ魔物や蛮族退治を日夜行い、さらに他国が武力侵攻してきた際には国を守る第1の防衛ラインとして誰よりも先に戦場のド真ん中で戦うことになるからだ。
そのため国王軍ほど、とまではいかないがかなりの規模の常備軍を保有しているし、国土防衛の義務を背負う見返りとして与えられる領土も辺境とはいえ他の爵位持ちと比べたらかなり広い。
そんな辺境伯には
だからこそ、その辺境伯の娘であるエレアノールは将来的にはこの辺り一帯を治める領主たちの元締めをしている、王家の後継者たるラピス第1王子の正妻となる人物だ。
そんな重要人物となると当然警備は厳重になるのだが、グスタフのオッサンが言うには「それを考えても数が多すぎる」との事だ。それに関しては俺も同意見で、少し過剰なんじゃないのか? と思う位警備が厳重すぎる。
何か意図でもあるのだろうか……?
【次回予告】
彼女は12歳の時、自分の運命をのぞいてしまった。
運命を変えろ。さもなくば……死。
第4話 「悪役令嬢、余命4年と宣告される」
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