駆け出し冒険者のコボルト討伐
洋紅色
序章 プロローグ
近くの横穴に身を隠し息を殺しながら周囲を伺う。
少しの呼吸の音が酷く大きく聞こえ、自分の心音が洞窟内に響いているように感じる。
今回のクエストの討伐対象に見つからないように逃げ延びる事を考える。武器は落としているし、利き手と左足を負傷して上手く動かせない状態での戦闘は行えない。
コボルト討伐は初心者冒険者向けと聞いていたが、アソコにいるのはそんな生易しい存在ではない。
ゆっくりと隙間から顔をのぞかせると、醜悪な顔をしたコボルトが徐々にこちらに近づいてきているのが分かる。
……目を潰しているはずなのに迷いなくこちらに向かってきている。
この依頼を受け付けてくれたギルド員の言う事を聞かなかったせいなのかなと今更反省する。
(来たばかりで金が無かったから節約したつもりだったけど、今の状況を考えるとバカだよな…。)
嘆息しながら覚悟を決める。
最後のチャンスにかけて飛び出すタイミングを伺っていると頬に風を感じる。
……洞窟で風?
一時感じていた恐怖を忘れるとコボルトに向けて突っ込んでいく影が見えた。
コボルトの苦しむ声が聞こえる。何が起こったのか分からず、フラフラと不確かな足取りで横穴から外に出る。
「ケインさんご無事ですか!?」
この場に来るはずのない人の声が聞こえた。
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