第44話 「同郷の気配」

「すみません、近くの駅までなんですけど. . . 」

「全然構いませんよ!」


東京タワーの前でお乗せしたお客様の最初の一言で、

あることを感じ取ってしまった。


タクシー運転手として多くのお客様をお乗せし、様々な人を見ていると、

嫌でもいろいろと感じるモノがある。

この人を乗っけると吐くかもしれない、という時は当たるし

手の上げ方でよく乗る方なのかどうかも分かる。


特に凄いことだとは思ってはおらず、スタバでサイズをいう時にゴニョゴニョしてしまったら、スタバにあまり行かないことが相手に伝わることと同じようなもの。

ちなみに、僕は一度もスタバに行ったことがなく、きっと「普通のサイズで」とか言ってしまうと思う。

ステーキの焼き加減もミディアムとかレアとかがあまり認識できていないので「普通の焼き加減で」と咄嗟に口から出てしまう。


そんな、それぞれの職業にあるような大したことない能力とは別に、

「この方は!」と思う瞬間もある。


それが同郷の方をお乗せした時。


僕は沖縄出身だが、このお客様が「すみません」と言っただけでそれを感じた。

お客様が乗ってくると、誰がどう見ても沖縄の苗字である僕の名前を見て反応した。


「俺ら沖縄から来たんだけど」

「やっぱりそうでしたか!乗ってきてすぐ気付きましたよ!」

「うそ?そんなに出てるー!?」

「はい!分かります!」


沖縄らしいイントネーションが懐かしい。


そこからは沖縄トーク、どこの出身?という話から意外に地元が近いことが判明し話は弾んだ。


ほんの1,2分、ワンメーターの距離ではあったが楽しい時間だった。

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