矛盾(New花金Day)

「ダメだ、思いつかない……」


 俺は頭を抱えた。

 ずっと考えているが、どうもしっくり来ない。


「どうしたの?」


 食後のティータイム、彼女が俺に話しかけてきた。

 俺はカップをテーブルに下ろして答える。


「いや、フォロワーさんが出すお題で、500字から1000字のショートショートを書いてんだけどさ……今回のお題が『矛盾』で、思いつかないんだよ」

「うーん、そんなに難しい?」


 不思議そうな顔で彼女が尋ねる。


「ほら、まーくん、SF好きじゃん。人工知能には出来なくて人間が出来ているのが『矛盾』した思考だって、この間言ってなかった?」


 彼女が言う通り、俺が真っ先に思いついたのはそれだった。だが。


「最近シリアスというか、重くて悲しめのものばっか書いていたから、もうちょっと明るめのやつ書きたいんだよ」


 かと言って、『矛盾』のテーマにした明るいものってあるんだろうか……。

 そうぼやくと、「そんなのいっぱいあるじゃん!」と彼女は朗らかに言った。



「『稀によくある』」

「うわー、矛盾ー」



 しかしそれしか言いようのない現象が稀によく起きるんだよなー。



「『絶対は絶対ない』」

「絶対って言っちゃってるよ」

「『動くな、手を上げろ』」

「どっちだよ」

「『半チャーハン大盛り』」

「普通にチャーハン頼め」

「『生きた化石』」

「普通に意味がわからんけど一般的に使われるよな」

「『I can't speak English』」

「喋ってんやん」



 よくそんなに沢山出てくるものだ。

 そう感心している俺に、まあでも一番は、と彼女は続けた。



「『よく落ちる洗剤』と『匂いが落ちない柔軟剤』の組み合わせじゃないかな!」


 ーー世の中矛盾でいっぱいだ。

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