初依頼5

同日、ハートがエルドラを出発してから、およそ2時間後に王国騎士団副団長レオン・エヴァレット含め騎士団は、帝国との戦争に勝つためにレオン自身の立てた策の前準備としてエルドラを出発していた。

策の一つとして、最初の戦地はタール草原でありそこからジュラール大森林へと誘い込む動きがある。具体的にいうならば、誘い込む場所はジュラール大森林南部だ。誘い込む理由としては帝国の八剣の一人【魔導殺し】対策だ。しかしそこに誘い込んでからもまだ王国軍全体としては帝国軍に勝てないであろう。そう思ったレオンは、ジュラール大森林南部に住んでいるベンガル族に王国軍を囮にして挟み撃ちを行うように救援を頼もうと向かった。結果としてはハートを追った形となった。

騎士団員達が不安に思い、レオンに質問をする。


「レオン様、本当にベンガル族は私達の話を聞いてくれるのでしょうか?」


「ジュラール大森林の部族とは交流はほとんどないはずですよね?」


「大丈夫だ、お前らには言っていなかったがベンガル族族長ベンガル・リー・クロロ殿とは戦地を渡り合った友だ。必ず私を助けてくれる。だから心配はするな。」


「そ、そうですか。ならば大丈夫ですね」


「帝国との戦には彼らの力が必要だ」


「そういえば森に入ってから私達一度も襲われませんね」


「たしかにそうだな。いつもなら何回かは戦うのだがな」


レオン達は違和感を覚えながらもジュラール大森林南部へと進む。爆発音が聞こえる。


「爆発音?この方角はベンガルの里だ」


なにかがおかしい。そう思いレオンは声を大きく上げる。


「お前たち、ベンガルの里へ急ぐぞ」


馬を走らせる。里の入り口へと到着する。

レオンは驚く。周りはベンガル族の血だらけの死体、壊れた住居。


「こ‥これは一体?」


更に奥にと進む。すると黒いローブを着た怪しい男が。

近くには白いローブの首のない死体。首は近くに転がっている。その横には血だらけのベンガル族の娘――シャルルが。怪しい男がシャルルに何かをしている。


黒いローブを着た怪しい男、コイツが原因か?

レオンは怪しい男を見かけ叫ぶ。


「貴様ぁ!そこでなにをしている?」


コイツを捕まえて吐かせるしかない。

と騎士団員達に捕獲の合図を送った。


だが、黒いローブの男は気づいた時にはそこにはいなかった。


レオンは探すことを考えたが、まだ生きてるベンガル族もいるかも知れない。そちらを手当をすることが先だ。

レオン自身は黒いローブの横にいたシャルルの元に駆ける。


「大丈夫か?生きているか?」


シャルルはなんとか声を絞り出す。


「ち‥ちち‥(父上を先に)」


まずいな、ギリギリの状態だ。

レオンは急いでポーションを取り出しシャルルに飲ませる。

シャルルの傷が癒えていく。


「喋れるか?」


シャルルは震える手で父親のいる方角を指を指しながら、


「私よりも父上を先に頼む‥」 


レオンはシャルルをそっと寝かせると急いで向かう。 


しかし、レオンが駆けつけた時にはすでにベンガル・リー・クロロは息を引き取っていた。

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