初依頼2

【ベンガルの里】


ジュラール大森林の最南端に位置する里。

人口は約100人。ジュラール大森林に住んでいる部族の中では規模的には普通である。猫獣人のベンガル族が暮らしている。ベンガル・リー・クロロという猫獣人が族長である。ここで生まれた者はベンガルの名が一人一人与えられる。城塞都市エルドラまではおよそ半日かかる距離。

ベンガル族は狩りを主にして暮らしている。

ジュラール大森林に住む部族は大半は狩りで一部の部族はヒューマンなどその他種との交流がある。


ベンガル・リー・シャルルは族長の一人娘である。彼女――シャルルには弓の才があった。それ故、族長である父親は子供の頃からシャルルに徹底して弓を引かせた。ベンガルの里では彼女に弓で勝てる者はいなかった。シャルルには弓の才もあったが耳も良かった。足音さえ聞こえれば後は弓を引くだけ。それだけで獲物は狩れる。部族間抗争にもシャルルの弓は数々の敵を貫いていった。そんなシャルルは今日も与えられた仕事に勤しんでいた。いつも通り、獲物を探し狩るだけだ。


しかし、今日は獲物がいない。

探しても探しても獲物がいない。

足音や物音すらしない。

今までこのような日は一度もなかった。


「おかしい」


里の周りにいないならと少しばかり出てみる。


「ん?」


そこにはおかしな男がいた。

怪しい、怪しすぎる。

コイツが森になにかしたのか?

そう思っていると男はこちらに向かってきた。

シャルルは警戒して木の上に移る。

そして弓を構えて牽制する。

矢は男の横を通り過ぎた。

男は立ち止まって、木に刺さった矢を確認した。

それでもこちらに向かおうとしてきた。

仕方ないがここから里の領域だ。


「ここになんのようだ?」


こんな怪しい男に里に近づかれても困る。


『いやー、帰り道に迷ってしまって‥』


何をワケのわからないこと言っているんだ。


「帰り道だと?そもそも、武器も何も持たずにか?」


『ああ、本来は薬草を探すだけだったんだ‥』


武器を持たずにこの森に来ただと?

ここは最南端に近い場所。

入り口からでも距離はある。

襲われる可能性もある。

私の弓に怯えもしないし警戒もしない。

いったいコイツはナニモノだ?


そんな疑問にさらに顔をしかめる。


後ろで木が倒れる音。

そして爆発―――ドオォーン――


「里の方か?」


シャルルは男を置き去りにして

里に向かって駆ける。 

なんだ?里に近づくとそれは聞こえる。


「悲鳴か?」


シャルルはさらに加速する。

一刻もはやく里に戻らねば。

近づけば近づくほど聞こえる悲鳴――


シャルルが里に着いた時、

血まみれのベンガル族の人々が。


「な…なんなんだこれわ…」


シャルルは顔を青くしながら、

里の中央まで駆ける。


剣で貫かれた父親が―――

そこには白いローブを着た2人組が―――


「父さん!」


シャルルは顔を真っ赤にして力いっぱい弓を構える。


「貴様達!よくも!」


涙目になりながらはちきれんばかりの怒りととも弓を引いた。


〘フレイム・アロー/炎の矢〙


真っ赤な炎を纏った矢が飛んでいく。

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