完全犯罪1

マッテオの話が予想以上に長かった。

外に出たら、真っ暗だ。

どこも建物は光がついている。

この光もおそらくは魔法だろう。


また街を歩き始める。

人気のなさそうな建物を見つける。

建物というより倉庫に近い。

左手を液状化させ、

扉にかけられている南京錠に突っ込む。

硬質化させ鍵を開け中に入る。

貰った剣などだけ中に入れ、また外にでる。

そして南京錠をかけ

今度は扉の下の隙間から入る。

やっていることは、完全犯罪バンザイである。


中は暗いが倉庫上部の窓から月が見えている。

月はあるのか。太陽もあったしな。

もう深くは気にしない。


月明かりがあたっている場所までくる。

先程もらった厚い剣を鞘から抜く。


『本当に分厚い剣だな。斬るというより割るに近いな』



持ち手を変え

剣をおもむろに自分の腹に突きつける。

それはさながら切腹だ。

すると、剣はハートに吸収されていった。


やはりな。

剣は元々鉱石から作られているから

吸収できると思ったのだが正解だった。

鞘も金属製のため吸収ができた。

吸収したのに体格に変化はない。

金属たち(鉱石)はストックされたっぽいな。

自分のカラダなのによくわからない。

が、そーいうことにしておこう。


ハートは倉庫内にあった、椅子に腰をかける。

特に眠る必要がないが、目を閉じてみる。

ふぅーと溜め息をつく。

疲れはないが疲れたな。


すると声が聞こえた。

あー聞きたくない声だ。


「アイアンハートさん!アイアンハートさん!」


相変わらずうるさい声。

目を開けると白い空間だ。

プロールは話を始める。 


「どうでした?初めての異世界?疲れました?」


コイツの存在が疲れさせるという。


『どうもこうも、まだ何もしてはいねえよ!』


コイツと話すときだけはやたら感情が湧いてくる。


「いやいや、さっきの完全犯罪みたいな潜入?あれは中々良かったですよ。ミッションin天界を作った監督には大ウケでしたよ!」


ミッションin天界って‥


「そうそう、評価も良かったんでボーナスが出ましたよ」


『良かったな』


プロールは謎のボタンを取り出す。


「なので、アイアンハートさんにもボーナスがあります。これを押してください。」


『なんだそれは?』


「スキルルーレットのボタンですよ、異世界ティルナノーグはスキルあるでしょ?そしてその中でも唯一存在しないスキルを獲得できちゃうすごいボタンですよ!」


そもそもスキルがあったことすら知らない‥


「取りあえず押してみてくださいよー」


と言われ無理矢理押させられる。


突然どこからともなくルーレットが現れ、回りはじめる。

そして段々に動きがゆっくりになり止まる。


【どこでも目がミエール】

[スキル効果:いつでもどこでも目が見える。たとえこの世から光がなくなってもあなたの顔が見えるわ。]


『!?』


「すごいですねこのスキル、夜でも暇な人にピッタリじゃないですか?」


コイツ絶対バカにしてるだろ。


「忘れてました。初回無料なんで、もう一回だけ押しちゃってください。」


さっさと帰りたい‥

ボタンを押す。ルーレットが現れ、回りはじめる。


【吸着力の変わらないただひとつカラダ】

[スキル効果:カラダのどこか一部分さえ触れていれば、あらゆる法則無視して重さを感じずに引っ付いていられる。あなたに永遠に触れていたい、そうこれは愛なのよ。]


潜入するのにまた便利なスキルだな。

潜入してやることも何もないが。

スキルの説明はメンヘラ気質満々だが…


「では、また来ますね、この調子で異世界LIFE、いや異世界LIVEをドンドン続けちゃって下さいー!」


視界が歪む。

倉庫に戻ったようだ。

なぜかわからないがもう朝だ。

プロールと話しても時が進んだのか

太陽が登ってきている。

ジュラール大森林に今度こそ向かわねば。

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