プロフィール

始閣しかく、十二歳、男。学舎の六学年生。卒業を間近に控え、既に砕氷さいひの実地研修を積んでいる。


九縁くぶち、十一歳、女。始閣しかくの妹。学舎の五学年生。兄と同じく砕氷さいひを目指している。


宗臣ときおみ、十二歳。男。学舎の六学年生。始閣しかくと共に砕氷さいひを目指し研修中。


蓮杖れんじょう、十二歳。男。学舎の六学年生。始閣しかく宗臣ときおみと共に砕氷さいひを目指し研修中。


角泉かくせん、十二歳。女。学舎の六学年生。始閣しかく宗臣ときおみ蓮杖れんじょうと共に砕氷さいひを目指し研修中。


釈侍しゃくじ、十一歳。女。角泉かくせんの妹。学舎の五学年生。姉と同じく砕氷さいひを目指している。


以上、非常に簡潔だが、それが彼ら彼女らのプロフィールであり、それ以外に詳細に書きようがない。格好も似通っていて、遠目には誰が誰かの区別もつかない。ただ、よく見ると、フードにそれぞれ地味ではあるが模様や飾りを付けるなどして、分かる人間には分かるような工夫もしている。


始閣しかくのフードには暗い赤の線が入っているが、これは体に流れている血の色を表してるそうだ。自分が生きているというアピールとして赤い色をモチーフに使う者は多い。


九縁くぶちのフードには濃い橙色のギザギザが入っていた。これは鼓動を意味するらしい。同じく命を表している。


宗臣ときおみのフードには<びしゃん>を図案化した記号が記されていた。代々、砕氷さいひの家系であることかららしい。


蓮杖れんじょうのフードには懐炉鹿かいろじかを図案化した記号が記されていた。彼の父親が懐炉鹿かいろじかの猟師であることからつけたものだった。


角泉かくせんのフードにはリボンのような赤い飾りがついていた。由来は本人どころか家族でさえ知らないが、彼女の家に代々伝わるものだそうだ。


釈侍しゃくじのフードには、姉の蓮杖れんじょうのそれに比べややピンクがかった、それでもやはり地味な印象が拭えない色合いのリボンのような飾りがついていた。


皆、物心がつく以前から玩具代わりに<びしゃん>を振るい、凍った土に穴を掘ることを遊びとして育った者達だった。それ以外には趣味らしい趣味もない。娯楽がないのだから当然だ。子供らしい遊びも知らない。迂闊に外に出てはしゃげば待っているのは死なのだ。実際、親が目を離した隙に外に遊びに出て凍死したり肺が凍って窒息死する子供は毎年必ず出る。そういう世界なのだから。


故に、幼くても彼ら彼女らはこの世界の立派な住人であった。


なお、学舎は、町ごとに校舎は別れているが全て<学舎>と呼ばれ一括で管理運営されている。


「それでは、よろしくお願いします」


そう言ったひめが凍土にツルハシを振るいそれを見る間に穴を穿つと、それによって出た残土を、トラックに繋いだソリへとシャベルで積み始めたのだった。


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