ニュート
脱衣所からさらに室内に入ろうとドアに手を掛けた時、彼女の聴覚センサーが人間の声を捉えた。と言っても、室内に人間がいた訳ではない。氷窟から微かに届く
「ひめ、大丈夫か…?」
今日の分の作業を終えて帰る為にひめに声を掛けようとしたら氷窟が殆ど埋まっていたので心配になって声を掛けたのである。
「はい、問題ありません。ですが、目的の空間に辿り着くことができましたので、これから内部を調査いたします。恐らく時間を要する作業になりますので、
「…分かった。無理はするなよ…」
淡々としたひめの声に
見ると、充電式の室内灯があった。それに触れると、淡い光が室内をぼんやりと照らした。まだ十分に機能していたのだ。そしてひめにとっては十分以上の灯りになった。
やはり既に引き払った後らしく、これといったものは残されてはいなかったが、
他には、テーブル、ベッド、チェスト、クローゼットといったものがあった。そして彼女は、チェストの上に置かれていたものに気が付いた。タブレットだった。しかし一目見て非常に旧式なものだというのが分かった。だからここに残されていたのかもしれない。
それでも、電源ボタンに触れると、電源が入った。
「初めまして。私は皆さまの生活をサポートするAI、ニュートと申します」
起動した途端に明るい声でタブレットがそう声を上げた。AI搭載型のタブレットだ。メイトギアに比べれば殆ど玩具のような簡便なものだが、それでも人間と普通に会話できる程度のものではある。
「初めまして、ニュート。私は、
ひめがそう応えると、ニュートと名乗ったタブレットも、
「初めまして、<ねむりひめ>。それで本日はどのようなご用件でしょうか?」
と応じた。
規格が合うものであればわざわざこのように会話しなくてもリンクするだけで情報がやり取りできるのだが、残念ながらひめとニュートの間には数百年分の技術格差があったのだった。
もっとも、実はニュートの方が新しいのだけれど。
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