意外
ひめは人間に奉仕するのが役目のロボットである。しかしだからといって、
『人間は必ず結婚し子を
などという価値観を持っているわけではない。むしろそれを<義務>として強要するのは、
『個人の自由を侵害する』
として好ましくないと思考するように作られている。
また、彼女が製造されたばかりの
なお、<小児性愛>は<疾患>として保健医療の対象となり、それを抑えるための代償行動用の、<ラブドール>と称される性機能さえ有した専用のロボット(外見だけではほぼ人間と区別がつかない)も存在し、購入には保険も適用される。ゆえに、それでもなお十六歳未満の子供をそういう対象として扱おうとする輩には厳しいのだ。
だが、それはあくまで『そういう社会だった』というだけである。
状況が変わり法律が変わり認識が変わり価値観が変わり、十三歳で成人と公式に認められる社会になったというのであればそれを受け入れる以外に選択肢はなかった。彼女は人間に従うロボットなのだから。
一方、『人間を殺傷する』という点については、これは<社会的な倫理観>の問題ではなくあくまでAIに対して直接設けられた極めて高度な禁則事項なので、たとえその社会の法律が殺人を許していても従うことはないが。
まあそれはそれとして、
が、この社会の場合、どうすれば応援することになるのかがまだデータ不足で判断が付かなかった。そんなひめを脇に置いて、
「ちょっと師匠のところに行ってくる…」
そう言って裏口から出て行った
「師匠…私……」
と声を掛けながら
「…あれ…?」
「
彼女に気付いて振り返った重蔵の前に立っていたのは、
「ああ…師匠、そうだったんですね……」
目にした時には驚いたものの、すぐに冷静さを取り戻した彼女が言った。
もちろん
『似合ってるか……』
と、自分よりはまだ釣り合いがとれるとしてすぐに気持ちを切り替えることができた。
しかし、少し離れたところで音声を拾い状況を察知したひめにしてみれば、むしろ想定外の事態だった。
『そんな…それらしい兆候はまったく……?』
今回の決断を推測させるような予兆は何一つ感じ取れなかったのだ。重蔵からも、
だから、ひめは、
『再度、認識を再設定する必要がありますね……』
と、自身の認識の根本部分の設定の変更を余儀なくされてしまった。
彼女がかつて運用されていた世界とは根本的に価値観が異なるのだと。ここでは、都合さえ合えば、互いの利害さえ合致すれば、感情などなくとも結婚までに至るのだということは認識していたはずだが、それでもまだ甘かったのだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます