プラン
先にも触れたとおり、ここでは、既に結婚式というものさえ廃れてしまっている。身近な人間だけで集まり、その前で結婚することを宣言し、役所に書類を提出するだけで済んでしまうのだ。だから実に気軽に結婚する。それでどうしても合わないとなれば離婚も簡単だった。ただ離婚届を出せばいい。片方からの申し出だけでも成立する。相手はたいていそれを拒まないからだ。
ある意味では、双方の合意でよってのみ成立するという婚姻関係というものの本質に極めて忠実とも言えるだろう。しかしそれにしても、である。
ひめは、自身が知りうる、独自の政策などを取っている自治惑星での事例と照合してみたが、ここまで割り切った制度となっているものは検索されなかった。彼女のデータはもっとも新しいものでも数百年前なので現在ではまた変わっているかもしれないものの、少なくとも現時点では彼女の知らない世界と言えるものだっただろう。
『これは更新が大変ですね……』
単に環境を把握するだけならそれほどでもないが、社会制度と言うか不文律として存在する<常識>や<慣習>についてはそれを成立させうる様々な要素について同時に収集しないといけないので、完全に理解するには、現在の技術をすべて集積するよりも時間を要するだろうと思われた。
『それでも、人は生きるのですね……』
あまりの変貌ぶりに戸惑いながらも、ひめは人間の逞しさと適応力の高さを改めて認識せずにはいられなかった。なるほどこうして宇宙にまで活動域を伸ばすことになるのも当然だと。
それと同時に、この世界の人々を何とかして生き永らえさせたいという自身の目的を新たにした。
『何とか、他の惑星に連絡を取り、救援の手を差し伸べていただければ』
ひめの持つ最新のデータ(と言っても数百年前のものだが)によれば、惑星そのものの運搬さえ可能にする技術があるという。マイクロセコンドの単位で人工的な極小ブラックホールを発生させ、その重力によって誘導するというものである。簡単には使えないものの既に実用化されているというデータはあった。それによってこの惑星を太陽の光が届く位置に据えることも理論上は可能である。
かつてこの惑星で起こった災禍についての詳細なデータはなかったものの、彼女が最後にフルメンテナンスを受けた時に担当技術者によって述懐された、風聞に等しい口述記録と現在の環境を合わせて推測すれば、この惑星がどのような状態にあるのかという大まかな部分は察することができた。
『なるべく早いうちに、私が地上に出て大出力の通信機を設置し、全チャンネルに向けて救難信号を発信するというのが一番実現性が高いプランでしょうか……』
重蔵と
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