釣果
一見すると殆ど波もないただの水溜りのようなその地底湖にも、数は少ないが魚は住んでいた。実はこの惑星ハイシャインには、水を取り込んで水素によって代謝し、酸素を放出するという微生物がおり、それがこの地底の海に酸素を供給するので、殆ど波がなくても魚が生息できるのだった。
それでも、絶対的に数が少ないこともあり、釣れるのは月にせいぜい一尾か二尾。だからそれで生活が成り立つように非常に高価なのである。
そんな訳で釣れるところが見られることは滅多にないのだが、この日はその<滅多にないこと>が起こった。
「む…?」
「…え?」
と
分厚い手袋をつけた手が繊細に竿を操る様子が見て取れた。
邪魔をしないようにする為か、
静かな戦いが一分ほど続き、そして突然、
万が一にも針が外れたり糸が切れては一大事なので、慎重かつ力強く、引いたり緩めたりを繰り返す。
五分ほどそれを続けて、ようやく魚が疲れたのかあまり暴れなくなったところを引き寄せて、網で確実に掬い上げた。
大きい。優に五十センチはあるであろう、どことなくブリに似た魚だった。
「
それまで殆ど口もきかなかった
「よくやったな…」
隣で釣りをしていた仲間の漁師が称えると、ようやく彼の顔に僅かな笑みがこぼれた。
釣れた魚を大事そうに箱に詰め、彼は竿を片付けて帰り支度を始めた。今日はもうこれで終わりである。このまま市場へと持って行って買い取ってもらうのだ。
「お前のおかげかもしれないな…」
魚が入った箱を肩に担いだ
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