機能
『私も、お手伝いしてよろしいでしょうか?』
ひめのその申し出に戸惑いながらも、
「じゃあ、この辺から十時の方向に向かって掘ってみてくれ…」
方向を指示したのは、あまり適当に掘り進めると他の氷窟にぶつかったり氷窟の強度を下げてしまったりする危険性があるからである。大まかな氷窟の構造は頭に入っており、互いにそれを考慮しつつ掘り進んでいる。やたらとでたらめに掘っている訳ではないのだ。
「十時の方向ですね。分かりました。他の方が掘っている氷窟に影響を与えないように気を付ければいいのですね?」
そう確認するひめに、
「承知しました。では、改めて氷窟の構造を把握させていただきます。こちらのハンマーをお借りしてよろしいでしょうか?」
と言って彼女が手にしたのは、普段はあまり使うこともないただの金属製のハンマーだった。「ああ…」と承諾をうけたことを確認し、ひめはそれを右手に持ち、左手と右耳を氷窟の壁に付け、ハンマーで壁を数回叩いた。そして別の壁を同じようにして叩く。それを何度か繰り返し、「はい、分かりました」と告げてハンマーを戻した。
「これで大まかな氷窟の構造が把握できました。あと、この位置から真っ直ぐ三十メートルのところに人工的な構造物による空間があります。私はそちらの方に向かって掘り進めばよいでしょうか?」
と、
「あ…ああ、それでいい…」
それからひめは
呆気に取られた
だが、あまり一度に掘り進めると、出た土を運ぶのが大変になってしまう。だから
「今日はそのくらいにしておけ…」
と、二メートルくらい掘り進めたひめに声を掛けた。
「承知いたしました」
「あまり一度に掘り進めるのもかえって非効率になってしまいますね」
ひめもそれを理解したらしく反省していた。
そうして帰りにひめが発見された物置でメディアを回収。残土袋も背負って出口へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます