落下物に御注意を

紅鶴蒼桜

落下物に御注意を

ジリリリ、プツッ。

目覚まし時計を止めてムクリとベッドから起き上がる。

その後TVを見ながら朝ごはんを食べる。

いつもの事。いつもの僕の朝の光景だ。

ここまでは。

「おっと、あそこの番組もチェックしなきゃな」

とリモコンのボタンを押すが、チャンネルが変わらない。

電池切れかな。

と思って替えの乾電池を探す。

あったあった。

と、リモコンの電池を交換しようとしたら、ポロっと電池を落としてしまった。

「おっと」

落とした乾電池を拾おうとしたら、

ガンッ

と、テーブルの角に頭をぶつけてしまった。

僕は涙目で電池の交換をした。痛いなぁもう。

気持ちを切り替えて、TVを見ると丁度占いのコーナーが始まる所だった。

そういえばいつもは今の時間違うチャンネルを観ていたんだったな。

まあ今日ぐらいはいいかな。

と思いそのまま占いを観る。

「今日のーー座の血液型ーー型の人は・・・」

なんか緊張するな。

「運勢はBAD、落下物に注意しましょう。ラッキーアイテムは・・・」

ブツンッ

なんか運勢すごく悪そうだったので、ついTVを消してしまった。

まあ、気にしないで出かけよう。


ドアを開けて外に出た時だった。

コツン

と、小石が頭に当たった。

?風でも飛ばされて来たのか。

結構強い風が吹いていた。

まあ、台風並みの凄い強い風でははないのだけれどね。

気にしないで先を急ぐ。

しばらくは何事も無かったのだが、

今度は水ヨーヨーが、上から降ってきた。

パンッ

と割れて頭が水浸しに。

何なんだよ。

上を向いても、何も無し。

ハンカチで頭を拭きながら歩いていると、

「おっと」

たたらを踏んでいたら、目の前に植木鉢が落ちてきた。

びっくりして後ずさる。

危ない危ない、当たらなくて良かった。

しかし今日は色んな物が良く降って来る日だな。やっぱり風が強く吹いているからか?

今日は家で大人しくしていようと思い、来た道を戻ろうとすると、

ヒュン

と目の前を包丁が飛んできた。

「痛っ」

頬を少し掠めたのか、手で拭うと少し血がにじんでいた。

飛んで来た方を見ると、夫婦喧嘩の真っ最中らしく、その家の周りは色々な物が散乱していた。

「戻るのも危ないか」

そう思い結局進むことにした。


しかし、少し歩いた所で

フッ

と一瞬身体が軽くなり、辺りが暗くなって更に足に痛みが。

少し傷みが収まってから周りを見渡す。

ふと思って上を見上げると、なんだか明るい。

どうやらマンホールから落ちてしまったらしい。

梯子を登り上へ。

「全く、蓋ぐらい閉めておこうな」

蓋は無かったので業者がしめ忘れたのだろう。

僕はここにはいない誰かに悪態をついた。

ま、過ぎた事はしょうがない。

気を取りなおすと、また歩き始めた。

足はまだ少し痛かったが、歩く位なら大丈夫だ。

しばらく歩いた時、突然突風が吹いた。

僕は体を縮めて耐えると、

「危ないっ」

と声が聞こえたので咄嗟にダッシュで離れると、

上から看板が落ちてきた。

うわぁ、そのまま歩いていたら怪我じゃ済まなかったぞ。

とりあえず、声を掛けてきた人にお礼を言う。

やっぱり帰ろう。

そう思い、来た道を戻ろうとしたが、

「あの夫婦喧嘩がまだ続いているかもしれないな」

少し距離があるが回り道しよう。


家との距離が半分くらい進んだ頃、

ズルンッ、

水たまりで滑って頭を地面にぶつけてしまった。

痛い。最悪だな、今日は。

朝の占いを思い出す。

落下物に注意、だったな。

さっきまでの事を思い返す。

色々思い出すにつれて、

「当たりまくりで最悪じゃないか!」

つい、叫んでしまった。

今日は大人しく家で過ごそう。

と一歩踏み出した時、

グラグラッ、ゴゴゴゴッ、

地面が揺れた。

「地震か!」

僕は戦慄した。

今日の運勢と相性悪すぎ!

辺りを見回すと、とあるビルがかなり揺れていた。

もしかしてこっちに倒れるのか?

予想が当たりそうだと思い、その場から急いで離れる。

勿論当たった。

数瞬後、大きな地響きを立てて、さっきまでいた所にビルの残骸が倒れてきた。

ふぅと、一息ついて家路を急ぐ。


地震の余波か、塀などが崩れている所を避けて進む。

家のすぐ近くまで来た所で

「嘘だろ」

なんか巨大な隕石が落ちて来るんですけど!

「逃げなきゃ」

でもどこへ?

隕石はまだ上空だけれど、確実にこちらへ向かって落ちて来ていた。

「駄目だ、もう」

膝をがっくりとついて頭をかかえる。

すると、頭の中で今日の占いのことがよぎった。

「今日のラッキーアイテムは・・・」

「水です。水色の服や、噴水などが良いでしょう」

僕は立ち上がった。

「そうだ、水、水だよ!これで何とかしよう」

今日の事を振り返ってみると、小石には当たったが、そのあと水ヨーヨーで体が濡れたあと、植木鉢には寸前の所で当たらなかったじゃないか!マンホールから落ちたあと、看板が降って来たが大丈夫だったじゃないか!

「ふう」と、深呼吸して精神を鎮める。

更にいうと、水たまりで転んだ後、地震でビルが倒れてきたが、それも大丈夫だった。あれはもし下にいたら死んでいたな。

僕は家まで走って服が濡れるのも構わずにシャワーで身体中に水を大量にかぶると、外へ。

「来い、隕石め!」

と僕はもうやけで叫んだ。

空を見ると隕石はまだ上空にいた。

ただ何かおかしい。

「隕石が割れる?」

そう、隕石が5.6個に割れてきたのだ。

その隕石達が、軌道を変えて次々に地上に落下して来た。

ドォォォォと、大量の砂煙を撒き散らしながら衝突する。

辺りは灰色の煙で、僅かの周辺しか見えない。ただ、僕は命は助かったと本能的に感じた。

僅かの距離しか見えないので時間をかけて我が家に戻った。


TVをつけて隕石落下のニュースを探す。

ただ、隕石の話題は無かった。

もっと大きな出来事があったからだ。

「月が地球に接近しています」

と、キャスターが話していた。

月、月だって?

「このままでは地球に衝突して人類は死滅するでしょう」

「私達はなんとかする手立てを探しています」

色々喋っていたが僕は何も頭に入らなかった。

どうする?次は月が落ちて来るぞ。

水、水、何処かに沢山あるのは、

風呂場か!

僕は風呂に水をたっぷりと入れて蛇口も止めずに、その中にサブンと服も脱がずに入った。

とりあえず防水ラジオを聴きながらどうなるか待つ。

と、さっきまで緊張していたのと、風呂のリラックス効果が災いしたのか睡魔に襲われて眠ってしまった。


気がつくと、辺りは静かだ。

ただ、ラジオの音が聞こえるのみ。

窓を見てみると、隕石の落下でガラスが粉々に割れていた。

外はもう暗い。

ラジオを聴いてみる。

月の接近は止まって元の軌道に戻ったようだ。

助かったのか。

はははと、脱力する。

その時時報がなった。

午前2時だった。

つまり、

「「今日」は終わったんだな」

安心してたらくしゃみが出た。


ジリリリ、ブツッ

今日もまた、いつものように目覚まし時計を止めてムクリとベッドから起き上がる。

そしてTVを見ながら朝ごはんを食べる。

いつもの時間。いつもの光景。

「あそこの番組に変えるか」

とリモコンのボタンを押す。しかしチャンネルが変わらない。

昨日電池替えたばかりなのに。

替えの電池を探す所で。

何か既視感を感じた。

TVを見ると占いのコーナーをやっていた。

丁度、僕の所だった。

「今日のーー座の血液型ーー型の人は・・・」


悪夢はまだ終わりそうにない。

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落下物に御注意を 紅鶴蒼桜 @MariRube

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