爽やかな青なんて

春野 秋

ばいばい

「じゃあね、シアワセになれよ」


ガチャン。そう言って彼は扉の向こう側に行ってしまった。

私が悪いんじゃないって彼は言ってた。

私がここで男の人と一緒にいても彼は怒ったりしなかった。

メールを返信するのに遅れても

彼は何も言わなかった。


「耐えられなくなった自分が悪い」と彼は言った。


何日も続けて同じようなことを繰り返した。

それでも家に帰れば彼がいた。

目が覚めれば彼が微笑んでくれた。


でももう、彼はいない。これからもう彼はいない。

私の心の中心に彼がいたと、初めて気づいた。

コロンとなにか落ちた。音がした。

私があげたストラップを彼は置いていったと気がついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る