第2話

海軍。海洋に覇を称え、海上より火力を投射しシーレーンを護り、領海を守る軍。

戦艦や空母のような主力艦や巡洋艦や駆逐艦、フリーゲートの様な補助艦に、潜水艦の様な特殊な艦まで様々だ。


首都ワシントンの目前にあるポーツマス軍港、東方艦隊旗艦の揚陸指揮艦に乗り込み視察を行っていた。


「東方艦隊艦隊長テネシー・スミス大将です。」


旗艦、ブルー・リッジの右側には原子力空母

ジェラルド・R・フォード級のエンタープライズが航行する。東方艦隊はジェラルド・R・フォード級の空母3隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を原子力動力に改装したタイコンデロガ級原子力ミサイル巡洋艦18隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦32隻を有する大艦隊である。


「スミス提督、周辺の国家は?」


「はい、総統閣下。我らが所領のアドラー帝国の対岸に存在する、ターネルス連邦と接触しようかと考えています。」


アドラー帝国と国号を定め、国家元首は勿論私、称号は総統と決めた。陸軍は機甲師団8個、歩兵師団7個、特殊介入旅団1個、独立混成旅団戦闘団が10個である。海軍は東方艦隊の他に海上護衛隊や同規模の西方艦隊が存在する。


「当艦隊に揚陸艦を指揮下に編入、親衛隊500名と共に私はターネルス連邦と接触する。」


方針の決定。如何なる強国と言えど、単独で世界を相手取り勝てるわけが無いことは歴史が証明している。賢者とは言わないが歴史に習うべきだろう。


海兵隊の1個連隊も同時に上陸する。ポーツマス軍港直下に存在するヘリ空母、14機のチヌークを載せたいずも型護衛艦2隻、ブルー・リッジやアメリカ型強襲揚陸艦3隻と駆逐艦8隻からなる派遣艦隊を編成。

同じくポーツマス軍港直下に存在するミサイル搭載の近代型戦艦アイオワを用意させそちらに乗艦する。


「アイオワ艦長、海軍大佐、ロバート・B・パーカーであります。総統閣下、よろしくお願いします。」


「ああ、よろしく。」


ふと右手に目をやる。私が前世死んだのは57歳の頃。だが、どう考えてもFORCE RECON時代の27の頃以前に戻っている。


「針路、東。目標ターネルス。出港!」



『こちら、アドラー帝国海軍特務艦隊旗艦ブルー・リッジである。貴国近海への停泊許可を求める。』


「閣下!どうされますか!」


ターネルス連邦の港湾都市アンカーの総督ディノス・アンファンド侯爵は苦悩する。


「私、1人で決めれる問題では無い。だが、停泊は黙認すると返答せよ。首都へ早馬を。」


クソッタレ。私の着任三日目で何故この様な目に。第一アドラー帝国とは何処の何奴だ。


『了解、停泊する。』


「騎士団に連絡、治安の悪化や民衆の不安に対応してくれと。」


はっ!と1人の役人が走る。王都へは早馬で往復に4~5時間。だが、意思統一や対応策の決定に幾日かかかるであろう。


『こちら、戦艦アイオワ。貴港へボートを送りたい。我が国の国家元首と護衛兵500名の上陸を許可されたし。我々は友好を求める者である。』


こ、国家元首だと!

伺う部下に溜息をつきながら上陸許可を出す。


「礼服に着替える。饗応の用意をしろ。」


クソッタレ。何度も言う。クソッタレ。


「閣下、上陸許可出ました。」


「そうか、強襲揚陸艦に移る。それより揚陸艇で上陸する。」


総統親衛隊がMk.23をコッキングしM416にマガジンを挿し込み、コッキングを行い初弾を薬室に送る。

俺もMP7にマガジンを挿し込み初弾を送る。

コートの中に隠し、連れてきたメイドはアタッシュケースの中にMP5を仕込んだコッファーを装備する。


レッグホルダーMk.23に初弾が送り込まれたことを確認し揚陸艇に乗り込む。


「出発。少佐、任せたぞ。」


「はい!お任せ下さい。」


強襲揚陸艦にその為だけに設計した500名搭載用の揚陸艇。強襲揚陸艦には1隻しか搭載不可だが、この為だけだ。問題はない。


「前方に高位の貴族と思しき人物を視認。」


親衛隊員が叫ぶ。水しぶきを浴びて私は久しぶりに海兵隊に戻った気分だった。


「アンカー総督、アンファンド侯爵です。国家元首の方は?」


「私だ。アドラー帝国総統ジャック・F・ハーロウ」


中年、我々現代人が中世ヨーロッパの貴族と想像するならこうだろうという姿そのままの男だった。


「これは失礼しました。総統…?」


「私は総統閣下の護衛を務める総統親衛隊の指揮官、リリー・イングラム少佐だ。」


「失礼しました。総統閣下。我が総督府へとお迎えします。」


対応は早い。偵察衛星の情報から王都は遠い。通信の兆候も掴めなかった事からこれは彼の独断だろう。決断力のある理性的なリーダーとは友好的に接するべきだな。海岸から上がった所に豪奢な馬車が止めてある。数日前から無人偵察機の調査でこの湊にはガレオン船や戦列艦の出入りが激しい事が判明している。重要な港湾施設という訳だ。そこの総督。中々な重要ポストに違いない。


「ようこそ、総統閣下。総督府です。あちらに控えるのが私の妻イザベラに御座います。」


総督府の入口にはヴィクトリア朝時代の様な衣装のメイドやら気品のある、上品な美人が一人。あれが妻か。


「イザベラ殿、歓迎感謝する。私はアドラー帝国総統ジャック・F・ハーロウだ。」


「アンカー総督ディノスが妻、イザベラに御座います。閣下。」


選抜した50名の小隊。クリス・カトラゼウス親衛隊中尉が指揮を執って居る物を引き連れ、伴ったメイド2名と共に総督府の中に入る。内部は豪奢。無駄と言えば無駄だろうし彼等の服装や装身具からは察せられたセンスの欠けらも無いが、外交の窓口と考えれば可笑しくは無い。


「閣下、今回の目的は何なのでしょうか?」


さぁ、私は何処まで出来るかな?自らを試すことは続けるべきだ。自分の限界は知るべきだからな。

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