イ-6)童女・牧童

(記2021/3/31)

小説 "名工と剣豪" に何べんか登場する「童女」について述べます。「童女」の語感にあどけない女児をイメージなさる方は多いかも知れません。それがまったくのマト外れとは申しませんが、宝剣匠(たくみ)さまをご理解いただくために泡なりの注釈を述べておきます。


童女の具体例をあげると「浪花千栄子」は童女の代表格と言えそうです。あぶく(泡)は浪花千栄子のなにを以って童女と決めつけているのでしょうか?奴隷のように扱われ・育った彼女の幼少時代をNHK連ドラ「おちょやん」で知った人は全員同感なさるのでないでしょうか。金銭のために売られてきたおちょやん。客商売の店の下働きとして幼い身で一日中働かなければならなかった環境に追いやられた少女。これが童女なのです。童女の対照的な立場がお姫さまとかお嬢さまになります。


仕事に追われるなかで大きくなった浪花千栄子は無学で文字を読めませんでした。古新聞かナニかで独学・文字を覚えたそうです。これが農家の童女であれば鶏や山羊・豚などの世話から水くみ・洗濯などに身をすり減らすことになるし、生きる場が牧場であれば男の子は牧童として生きることになる。童女・牧童は世間のルールを教わることなく、仕事場のルールに従って働くしかない。そうであれば「イツの日にか出世して」などと言った人間らしい夢を持つことすらも考えられないでしょう。


そう考えるとき浪花千栄子が特別な存在だったことはあなたもお分かりになるのでないでしょうか?21世紀の今日に於いても自分が置かれた環境に勝てない人が殆んどでありませんか?勝てなければこそ集って愚痴をいい・粗暴になり・社会に反抗し・弱い者イジメして面白がる。そういう人たちは環境を乗越えたとは申せません。「童女」の可愛らしい語感に阻まれて、奴隷状態の実態はなかなか見えない。浪花千栄子は特別の存在であって誰にでも真似できる易しい状況になかった。


あぶくが大好きな匠さまは童女を愛してらっしゃる。それであぶくにも匠さまの温かい心が他人ごとに思えず近しく感じられるのかも知れません。おちょやんが・匠さまが愚痴を言わないのは、愚痴を言ったら自分が置かれた悪い環境に隷属(れいぞく)することになるからです。悪い環境に染まってなるか‥との強い思いが匠さまの宝剣 "矛盾丸" に磨きをかけ・しっかり鍛える原動力になってきたのですから、悪い環境を乗越えればこそ自分を磨いてくれた環境を受入れ・感謝できるのです。

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