第7話威圧感

 信号を渡るふりをして、僕はすぐにUターンをする。

 笹川詩織に気づかれないように、常に約10メートルの距離を保つように意識しながら後ろを尾行する。

 完全にやっていることはストーカなのだが、僕は何とも思っていない。

 気になるから後をつける。

 これの何が悪いことなのか……?

 誰しも人間の探求心にはあらがえないのだから、僕はその欲望に忠実のまま笹川詩織の後をつける。

 決して好きだから追いかけるとかそういう意味ではない。

 この気になるも別に好きの気になるではなく、なんというか探求とかそっちの方の気になるだ。

 どうして僕があの笹川詩織を気にしているかというと、今日の朝話しかけられたから……という理由ではなく、今の笹川詩織は昨日コンビニにいた笹川詩織と同じ雰囲気だったからだ……。

 昼間の笹川詩織は常ににこやかで明るい雰囲気なのだが、今の彼女は何というか冷たくて暗い雰囲気を感じる。

 僕がこのまま彼女を追いかけていけば、朝の笹川詩織の質問の意味が分かるかもしれない。

 そう思って僕は今、笹川詩織を尾行している。

 っと、長ったらしく変なことを心の中で思いつつ、僕はゆっくりと笹川詩織のスピードに合わせて自転車をこいでいる。

 こっちの道はさっき僕が来た道なのだが、ここら辺は特に何もない。

 強いていうなら商店街があるのだが、この時間になるとどこも店を閉めている。

 つまり今この時間帯は何もないに等しい。

 そんな場所に一体何をしに来ているのだろう……。

 疑問に思いつつも笹川詩織を尾行し続けると、案の定商店街に入っていった。

 そして入ってすぐの場所にあるコンビニに入っていった。

 コンビニに入るなり右に曲がり雑誌コーナーのところで立ち読みを始めた。

 昨日も違うコンビニで立ち読みをしていたのだが、いったい彼女は何を呼んでいるのだろうか……?

 中に入って確認しようと思ったけど、僕がコンビニの中に入ったら怪しまれてしまうかもしれないので、少し遠い位置から観察する。

 十分ほどすると笹川詩織は雑誌コーナーを離れてどこかへ行ってしまった。

 この場所からだとよく見えないが、すぐにレジ袋を持った笹川詩織がコンビニから出てきた。

 そしてそのレジ袋の中からおにぎりやら唐揚げやらを取り出して食べ始めた。

 家で食べればいいのに。

 ますます彼女のことが分からなくなる。

 もう八時だというのに、何故コンビニのご飯を食べているのか……?

 そう疑問に思っていると、ご飯を食べ終えた笹川詩織はごみをごみ箱に捨てるとまたどこかへ歩き出した。

 僕はまた自転車をゆっくりとこぎ始める。

 そして5分ほどすると、笹川詩織は商店街を抜けて左に曲がった。

 このままだと見失うと思った僕は、ほんの少しだけ速度を上げて自転車をこいだ。

 そして商店街抜けて左を向くと、笹川詩織の姿がなかった……。

 ほんの一瞬、5秒ほど目を離しただけなのに、一体どこに消えてしまったのだろう……?

 僕は居なくなった笹川詩織を探すために、当りをキョロキョロと見渡していると、後ろから急に。


「ちょっと、そこのキモメガネ。いつまで私の後をつけてくる気?」


 っと、とてもこごえそうな、威圧感のある声がした。

 僕はその声の方を恐る恐る見てみると、腕を組んだ笹川詩織が僕を睨むようにこちらを見ていた……。

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