第3話裏と表

 家に着くなり僕は、買ってきたものをすぐに食べ始める。

 食べながらもさっきコンビニで見かけた彼女のことを思い出していた。

 他人なんてどうでもいい……。

 でもどうでもいいと思っているはずなのに、何故彼女がコンビニにいたのか気になってしまっている。

 多分どうでもいいと思っている時点で、どうでもよくはないのだろう……。

 さっきの彼女はいつもと少し雰囲気が違う気がした。

 一言も喋ったことがないので良くは知らないが、さっきの彼女からは冷たいような何とも言えない雰囲気を感じた……。

 まあ人間だれしも裏表があるのだろう。

 彼女のように誰にでも優しくいい顔をしている人間なら尚更なおさらだ。

 もう無駄なことを考えるのはやめよう。

 僕は食べていたプリンのごみを近くのごみ箱に捨てると、そのまま下の階に行く。

 

「あ、勇気。もうすぐでご飯できるから下にいてね」


「分かった」


 台所でご飯を作っている母親の背中を方に向けて、僕は一つ返事をする。

 この待っている時間はとても退屈だ。

 携帯もテレビも何も興味がなく、ひたすら勉強だけをし続ける毎日……。

 我ながらこれほど退屈な人生を歩んでいる人間もそうはいないと思う。

 それからぼーっとしたままソファで横になっていたら、いつの間にか料理が出来ていた。


「ゆうきー、できたわよ」


 母親に呼ばれて僕は料理の並べられたテーブルの前に座る。

 父親と母親と僕の三人が椅子に座ると、一斉に食べ始める。

 食べながら母親が僕の方を向いて。


「そういえば勇気。新学期はどう?」


 っと、学校について聞いてくる。

 聞かれた僕は口の中のものを飲み込むと。


「別にいつも通りだよ」


 いつも通りそう言った。

 すると母親もそれ以上は聞いてこず、無言のまま食べ続けていた。

 別に家族仲が悪いわけではない。

 ただ僕も父親もあまりしゃべらないから、必然的に会話が少なくなるだけだ……。


「ご馳走様」


 ご飯を食べ終わった僕は、食器を台所に戻すとすぐに自室に戻った。

 新学期一日目だからか分からないが、何もしてないのに今日は体が疲れていた。

 布団の中に潜ると、すぐに意識がもうろうとした。

 そして気が付けば、もう朝日を迎えていた。

 今日から授業か……。 

 僕は憂鬱な気分になりながら、学校に行く準備を始める。

 決して学校が嫌なわけではない。

 授業は割と好きだし、学食もおいしい。

 ただ他人が嫌いなだけだ……。

 他人と協力したり、他人と何かを成し遂げることが嫌いなのだ……。

 そうなると、やはり学校が嫌いなのかもしれない。

 学校の準備を終えた僕は玄関で靴を履き替えると。


「行ってきます」


 そう言って僕は、重い腰を上げて学校に向かった。

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