産まれる時代が遅かった

ツッキー

産まれる時代が遅かった

世間では、タピオカで町が賑わい、Eスポーツが盛り上がり、来年の東京五輪だとかで話は尽きない。

聞けば、タピオカは二十年前にも流行ったり、逆にEスポーツは今が一番盛んだと言われたり、時代の流れは速いなぁ、と五十歩後ろに遠巻きに見る。


少年は思った。

生まれるのに十年遅かった、と。


もしかしたら、十年と言わずに二十年、三十年四十年、一世紀飛ばして二、三百年、と江戸時代にタイムワープしてみたい願望はあるが、話が変わってしまう、と少年は頭を振って思考を戻す。



「お母さんが子供の頃ってゲームあったの?」

無知多き少年は母に聞いた。

「そうね、スーパーファミコンでマリオをしていたわ」

「俺は64とかもやってたな」

この話を聞くたびに毎回「ずるい」と思っている自分がいる。

スーパーファミコンや64なんて今の時代じゃ触れない。その時の時代にそったゲームが触れるのは、先に生きた人の特権ではあるけども、父母がswitchを触っている謎のに嫉妬する。


「あの頃はネットもそんな繋がってなかったんだぞ。お前分かるか?こう、ポケモン交換するのに線繋ぐんだぞ」

父母親戚先生その他もろもろから三十回は聞いたわファミコンやってろ老人。



《十年早いんだよ!!》

ゲームのキャラクターが敵を投げると同時に喋った。

そもそもこのセリフ、別のゲームの元ネタらしいが...、いやこのゲームも元ネタ...もういいや。少年は思考停止した。


でも、もしも自分が十年早く産まれたらどうなるんだろうか。

その時代のゲームやアニメ、細かく言うとBGMや絵柄も今と変わっているのだろう。

消費税も少ないし、さっきまで読んでた漫画は売られてないかもだし、スマホもないのかもしれない、ガラケーが流行るくらいだろうか?

いずれにしても、ネットが普及した時の喜びなどは、少年の世代よりもそれより先の世代が喜ぶのだろう。



「そういうことを、感想文に書くんだよ?」

俺はその少年に話しかけた。

「......こんな感じ?」

「ん?どれどれ...うん。よくできてる。この『ファミコンやってろ老人』の部分は消してね。先生も地味に傷ついてるから」

「えー」


しかしこの感想文、かなり良く書けてる。

自分が子供の頃はそんなことを考えなかったが...いや、俺も一度だけ考えたな。

確かあれは小学一年生の頃...。


『十年早かったら、先生と結婚できたのに!!』

『あはは、先生はそこまで若くありませんよ』

うん、黒歴史だ。

今思うと、あの先生いなすの上手いな。


しかし自分は、この時代に産まれて良かったと思ってる。

ネットが普及して、手軽に物を手に入れられたり。

昔ながらのドットも勿論いいが、ハイスピード、ハイクオリティの今のゲームも好きだし。

昔より美味い物が増えた、タピオカうっま。


これも、今の時代に産まれたおかげだろう。

少なくとも、三百年くらい前の江戸時代のはるかにマシだ。


《ピロン》

スマホから通知音がなった。

この音は...?


「やぁ人工知能、一体どうしたの?」

《マスター、私が産まれる時代は十年早かったようです》


どの世代でも、そんなことを考えるやつがいるらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

産まれる時代が遅かった ツッキー @tuxtuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ