今さらあっちの方がよかった?
No.2氏と会うまでの間、私はNo.1くんのことを考えていた。初めて、結婚相談所というところを利用して会った人。確かに「いい人」だった。なのに、まったくピンと来なかった。これでは、ふだんの仕事で会ってる人や、居酒屋で隣になってちょっとしゃべった人や、友だちの友だちや、そういった知り合っては特別な関係にならずに通り過ぎていってしまう人と何が違うというのだろう。
わざわざセッティングして会っているのだ。もっと深入りしてみて、いろいろ試して、じっくり検討して、それから判断するくらい慎重に過程を踏むのでなければ、ただただムダなことをしてるような気もする。
いや、でも直感でどんどん進まなければ、時間だけいたずらにかかって、何年もかけたのに気づけば収穫ゼロ、こんなにトシも取ってました〜! って結果になるかもしれない。(今だって、そんなようなものだ)。
どっちがいいのだろう? 考えれば考えるほど、わからなくなる。
過去に、友だちのお兄さんに職場の後輩という人を紹介されたことがあった。この人も年下だったけど、新聞記者だったせいもあって、お互いに共通の「ものを書く」という観点からずいぶんと話も弾み、初めて飲んだ珍しい「白樺ジュース」もとてもおいしくて、楽しかったのだ。No.1くんとしたお茶よりも、ずっと内容も濃かった。
それなのに、私はお兄さんから「どうだった?」と訊かれるまで、自分から連絡をしなかった。
「いい人で、お話してて楽しかったです。ありがとうございました」
「って、やっぱり、ダメだった……の? アイツの方に訊いても、曖昧な返事でさ。……てか、楽しかったんでしょ?」と、お兄さんの方からは、さも解せないといったトーンで問いかけられたものだった。
「はい。でも、あちらもそんなに積極的なお返事してないんですね? だったら……」
「なんか、よくわかんないね、二人とも」と、お兄さんは笑って続けた。
「まあ、一目惚れって感じにはならなかったってことかな? あとはねぇ、今、ほかに紹介できるヤツいないけど……また心しておくよ」
「すみません。私もこういうの、なんかよく慣れてなくて。でも、ぜひまた、よろしくお願いします」と、私はていねいにお礼を言って電話を切ったのだった。
今さらだけど、No.1くんよりもよかったかもしれない、と思う。相対的な言い方になるけど、「この人だ!」って心に飛び込んでくるのでなければ、あれこれ比べてみないとわからない。何がしかの差があって、そこからの選択でないと。
こうやって私は、No.2氏と会っても、今度はNo.1くんの方がよかったとか思ったりするの? 本格的な婚活を始めてみて、早くも迷走してるのか、私。
いつだったか、大反響を呼んだエッセイがあった。著者も、いわゆる行き遅れの女性で、婚活らしきことをしていたのではなかったか。内容の詳細は忘れたが、とても印象的な言葉があった。
そして、No.2氏とのお見合いで、私は図らずもその言葉をかみしめることになるのである。
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