これが結婚相談所ってやつ。
思い立ったが吉日。次の週末、私はさっそく由佳子の紹介してくれた結婚相談所にアポを入れた。通称「仲人おばさん」と呼ばれるスタッフの中年女性が応対してくれた。
まず、会員登録のためにプロフィールカードにこちらの素性を書き込む。趣味や特技、一言アピールなども。裏面は、お相手に対する希望、条件など。
記入が終わると、電話で言われていた写真を二枚提出した。正面から撮った、きちんと容貌全体が把握できる定型サイズのものと、人となりがわかるような気軽なスナップだ。
仕上げは面接。仲人おばさんがカードを見ながら私にいろいろ質問し、補足する内容をカードの余白に小さくメモしていく。そして最後に、「いいご縁を結んでいただくために私たちもがんばらせていただきますが、あなたも積極的にこちらに来て、男性のファイルをチェックして、いい人がいたらどんどん申し込んでくださいね」と言った。
むむ。メンドくさい。休みの日はふだんできないことをゆっくり心ゆくまでやりたい、と内心思う。が、いやいや、ここがダメなのだ。こんなノリで38年が過ぎてしまったのだ、と自分を戒める。
気を取り直して、とりあえず今日はせっかくこちらに来ていることだし、さっそく男性のファイルを見せてもらう。すると、あらら、プロフィールカードに写真がない!? 私のその反応を目ざとく見て取ったおばさんは、「興味のある方がいたら言ってください。そしたら、写真を出しますから」と言う。そして、「はぁ……」と戸惑う私に衝撃の一言をたたみかける。
「カードに写真が付いてると、皆さん写真ばっかり見て、全然ダメなのよ」。
むむむ。それはすなわち、こういうことですか?
「見た目で興味を引かれるような、見場の良い人はここにはいない」、はたまた「ほんの一握りの見場の良い人に、申し込みが集中してしまう」。声には出さずに、おばさんの言わんとするところを確認した私。プロフィールで一人よさげな人をチェックしたけれど、写真を出してこられた時にあまりに好みと相容れないと困る。つまり、それで却下すると、「見た目で(も)判断してます」感が半端ない。
言い訳をさせてもらうと、私はいわゆる「面食い」では決してない。そして、厳密には、タイプもない。強いて言うと、ただ、向かい合って座った時に「違和感がない」ことが条件かなというところ。見た目に関しては、実際に相対してみないとしっくり来るかどうかわからないというのが、厄介と言えば厄介だ。
別にイケメンかどうかで選ぶつもりもないんだけどなぁ、だから、カードに写真が貼ってあった方が話が早いのになぁ、などと内心ブツブツ思いながら、二軍のメンバーとしてさらに三人を半ば適当にピックアップした。
かくして、おばさんによって四枚の写真が目の前に並べられた。
外見でピンと来る人は一人もいなかった。が、おばさんの勧めもあって、二つ年下のごく普通の——見た目はそのへんにいつもいそうな普及版の——男性との面会をアレンジしてもらうことにした。
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